デリカミニ登場でファン歓喜! 一方で別モノのeKクロススペースが消滅する理由とは? (2/2ページ)

三菱にとって「デリカ」の名前は特別なもの

 そもそもekスペースはファミリーユーザーや子育て世代にアピールするファミリーユースのスライドドアを備えた大容量軽自動車だが、三菱のHPで大人の遊び、休日をテーマにアウトドアテイストをアピールするクロスオーバータイプのeKクロススペースとデリカミニは、車名や内外装デザインの違いはともかく、キャラクターがやや被ってしまう。

 いや、デリカミニはデリカの系譜、ekクロススペースはスーパーハイト系軽自動車そのものだから別物だ……、という声が聞こえてきそうだが、デリカミニのベース車が、くどいようだが、ekクロススペースであることを考えれば(室内、荷室の使い勝手はほぼ同じだ)、三菱自動車の規模として、ekクロススペースを落とすことは正しい選択だろう。

 そもそも三菱自動車は、デリカ、パジェロ、アウトランダー、エクリプスクロスといったSUV、クロスオーバーモデルに強い自動車メーカーであり、ゆえにekクロススペースも、あえて兄弟車の日産ルークスに対するカスタムモデルのハイウェイスターとは違う、デリカ顔が特徴のクロスオーバーモデルとして登場させているのだから。

 また、空前のアウトドア、キャンプブームの最中、かつてのパジェロミニのような、三菱色の強い軽自動車が切望されているのも事実。そんないまだから、ekクロススペースのクロスオーバーテイストあるスーパーハイト系軽自動車という三菱の土俵を、後継車としてデリカミニに明け渡すのも、まったく不思議ではない。

 デリカミニは、デリカ顔やリヤビューに入る「DELICA」のロゴを始め、足もとを引き締める大径タイヤ&専用サスペンション、おそらくekクロススペースよりも余裕がありそうな最低地上高、自慢の4WDシステム、悪路のための走行デバイスなどを満載しているから、まさに三菱らしさ爆発の軽自動車、スーパーハイト系軽自動車というわけだ。無論、基本部分はNMKV作の日産ルークスハイウェイスター、三菱ekクロススペースと変わらないはずで、オンロードの走行性能も、本体の熟成もあって文句なしだと期待できる。

 ただし、ekクロススペースをクロスオーバーモデルではなくekスペースのカスタムモデルとして捉えて気にいっていたユーザーにとっては、”ekスペースじゃないほう”が、デリカミニに集約されるのに抵抗があるかもしれない。「デリカミニだとちょっとゴツすぎる。悪路走行とは無縁だし。でも、ekスペースだと物足りない……」なんて感じる人もいるはずだ。ルークスの人気の中心がカスタム系のハイウェイスターであることも、その証拠である。

 とはいえ、三菱の両側スライドドアを持つスーパーハイト系軽自動車を、ファミリーにターゲットを絞ったekスペースとデリカミニの両極端に集約するのはいかにも三菱らしいラインアップだと思える。デリカの名前、響きは、とくに三菱ファンにとっては”クロス”とは比較にならないほどの威力があるからだ。

 空前のアウトドア、キャンプブームのいま、そんなデリカミニが、三菱ファン、デリカファンだけではなく、タフでアウトドアに似合う軽自動車を探していたユーザーに響き、大ヒットすることは間違いなしだろう。春のデビューというのもジャストタイミングではないか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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