スズキ車か……と思ったらトヨタだった! トヨタがスズキ大国のインドで「バレーノ」のOEM車「グランザ」を販売するワケ

この記事をまとめると

■インドではマルチ・スズキが圧倒的シェアを誇っている

■スズキ・バレーノのOEMモデルがトヨタで「グランザ」として販売されている

■わざわざトヨタでOEMモデルが販売されている背景を考えてみた

わざわざトヨタを選ぶ意味とは

 ショー(オートエキスポ2023/通称デリーオートエキスポ)での取材を終え、会場のあるノイダという町からデリーへ戻る帰路高速道路で撮影した1コマ。前方のシルバーが旧型で、後方の白が現行モデルのスズキ・バレーノかと思い“バレーノだらけ”というイメージで撮影したのだが、ホテルへ戻り画像整理していると、前方のシルバーのクルマのリヤセンター部のバッジがトヨタバッジであるのが確認できた。

 そうなのである、このシルバーのモデルはバレーノではなく、スズキのインド現地子会社であるマルチ・スズキ・インディア(以下マルチ・スズキ)で生産されているバレーノのトヨタ向けOEM(相手先ブランド供給)車となるグランザなのである(上記の写真のモデルは先代モデル)。

 グランザの供給は先代モデルのとき、2017年2月から始まっている。ちなみにインドではグランザとして名乗っているこのモデルは、南アフリカではスターレットという懐かしい名前で販売されている。

 日本国内ではトヨタが圧倒的な販売シェアを持ちトップの座に君臨しているが、インド国内では、前述したマルチ・スズキが逆に圧倒的な販売シェアを持ちトップとなっている。「そのような状況下でわざわざ「トヨタもの」を買う意味はあるのか」という声も聞くが……。

 インドにおけるバレーノはプレミアムコンパクトハッチバックという位置づけとなっている。全長は4メートル以下で、インドにおけるインセンティブを受けることができながら、高質感を売りにしており、インドにおいてスズキ版レクサス店ともいっていい「NEXA(ネクサ)店」で扱われている。

 つまり、同じスズキ車でもスイフトやデザイア(スイフトのセダン版)、ワゴンRよりは上級に位置づけられているのである。

 さあ、それではトヨタ版を売る意味を考えてみよう。

 まずインドで扱われているオリジナルのトヨタ車では全長が4メートルを切るモデルはない。その意味ではインセンティブを受けられるグランザのようなモデルは、ディーラーとしては欲しいところかもしれない。それより重要なのは、トヨタ車に乗るユーザーはスズキにおけるNEXA店の顧客、もしくはそれ以上の所得に余裕のある人が中心ということ。

 インドで販売されているオリジナルのトヨタ車はイノーバ・ハイクロス、フォーチュナー、カムリ、ヴェルファイアなど全長は4メートルを軽く超えるし、エンジン排気量も2リッターやそれ以上というモデルがほとんど。つまり、明らかに狙っている客層がアッパー志向にあるのだ。そうなると、セカンドカーなどのニーズも出てくるので、そこでグランザの出番ということにもなるだろう。

 たとえとして適切かどうかは別として、日本のトヨタディーラーでパッソやルーミー、ライズなど、ダイハツ製OEM車をラインアップしていることと狙いは近いのかもしれない。

 インドでバレーノを見かけたときは、「ひょっとしたらトヨタモデルかも?」としてグランザを探すのに筆者は滞在中少し夢中になってしまった。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

-

愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

新着情報