アルファロメオ初の電動化モデル トナーレ! 内外装はまるで宝探しのように「アルファファン」感涙の造形で溢れていた (2/2ページ)

アルファロメオのヘリテイジ探しも楽しいトナーレ

 彼らは過去にリスペクトを感じていることをまったく隠していない。たとえばサイドから見たときのなだらかなショルダーのラインは初代ジュリア・クーペにインスパイアされたもので、彼らはそれを“GTライン”と呼んでいる。三つ目のヘッドライトは、ES30のSZ/RZ、プロテオ・コンセプト、159やブレラ、2代目の939型スパイダーがヒントになっている。

 サイドウインドウとリヤウインドウの開口部の処理は、8Cコンペティツィオーネだ。テレフォンダイヤル型のホイールは、ティーポ33ストラダーレやジュリアGTAなどにも見られる、1960年代から続いてきた伝統的な丸孔の意匠だ。そのあたりは、たしかトナーレがデビューしたときにマッコリーニ自身が触れていたような記憶がある。

 だが、それだけじゃない。アルファロメオのアイコンともいえるフロントのスクデット──盾の部分──とその下の左右のインテークからなるトリロボ(三つ葉飾り)は初代ジュリエッタの頃にはすでに採用されていた伝統的な意匠だし、スクデットを強調するかのようなフロントフードの面構成/線構成は古くはスプリント・スペチアーレ、新しくは4Cなどにも共通している。

 ノーズの先端からサイドを経由してリヤ後端といった具合に360°グルリとつながるラインは、ディスコヴォランテやスパイダー・デュエットあたりがヒントになったものだろう。

 リヤウインドウ下側のVシェイプは、1930年代の8C 2900、あるいは2000年代のブレラなどにも見ることができる。テールランプ左右あたりが一文字を描くのは、164やプロテオ・コンセプト、916のGTVやスパイダーにも使われた手法。

 インテリアも然りで、ステアリングの3つのスポーク部に黒の意匠が埋め込まれているのは、ジュリア・スプリントGTVあたりのアルミに黒のホーンボタンが埋め込まれたデザインから来てるようだ。2眼のメーターナセルは1750GTVとかのジュリア・クーペの時代、あるいは156、初代スパイダーのシリーズ2やシリーズ3、156や159、ブレラ/939型スパイダー、さらには現行ジュリアなどにも共通してる意匠。切り換え可能なメーター表示の中のクラシカルな文字盤は、それこそ1970年代のジュリアとかを彷彿とさせる。

 それらがコピーではなくあらためて解釈しなおされて、まったく無理も矛盾もなく、1台の新しいアルファロメオに整然と同居して美しさを形づくっている。そんな印象なのだ。

 アルファロメオをよく知ってる人であれば「ここはあのモデルかな?」といった具合にヘリテイジ探しを楽しむこともできるし、そうでない人はすんなりとカッコよさに惹きつけられる。それがこのクルマのデザインの凄いところだと思う。

 そのスタイリングデザインをまとった車体のサイズは全長4530mm、全幅1835mm、全高1600mm。姉にあたるステルヴィオより160mm短く、70mm細身で、80mm低い計算だ。ものすごくざっくりいうなら、日本車では三菱エクリプスクロスあたり、輸入車ではボルボXC40あたりと同じようなサイズ感。日本ではかなり使いやすいサイズといえるだろう。

 サイズがコンパクトである分、当然ながらステルヴィオより居住空間もラゲッジスペースも小さくなってるわけだが、もちろんSUVとして十分な広さは確保されている。見ているだけでも気分が浮きたつようなインプレッシヴなルックスをしているのに実用性を無視したりはしない。それも一部のスペチアーレを除くアルファロメオのプロダクションモデルの昔ながらの公式なのだ。

 短くまとめるのが苦手と言うこともあるし、だいぶ気に入ったモデルだからということもあるのだろうけど、ちょっとばかり冗長になってしまったようだ。実際にあらためて走らせてみての印象は、後編へ続く、というカタチにさせていただくことにしよう。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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