優勝したらフランスへ招待だと!? ルーテシアE-TECHの800km超「無給油エコラン大会」に本気で挑んでみた (1/2ページ)

この記事をまとめると

ルノーが媒体対抗のエコラン大会を実施

■車両はルーテシア E-TECH フルハイブリッド

■優勝するとフランス取材に招待される

呼ばれたのは総走行距離800kmオーバーの過酷なエコラン大会

「本場フランス取材だと!」。メールを見て思わず声に出す、不肖編集長の私、石田。

 まわりの編集部員達はキョトンとした表情だ。その後の編集会議で詳細を話すと全員が色めき立った。このメール、ルノージャポンから届いたもので、なんでも媒体対抗のエコラン大会で優勝すると、ルノーの本拠地であるフランスの取材に招待してくれるというのだ! これは当然参加せねばならない。

 だが、その大会の詳細をみて、思わず唸ってしまった。これはしんどい! しかも勝つとかムリなんじゃないか?

・車両はルーテシアE-TECH フルハイブリッド
・無給油で目的地を目指す
・出発場所はルノージャポン本社の隣にある日産本社
・愛媛県の松山市にある「重要文化財 萬翠荘」がゴール
・ルートは自由
・途中の宿泊等も自由
・燃費は燃費計によって計測
・燃費が一番良かったチームが優勝
・燃費が同数値だった場合は所要時間が短いチームが優勝

 これが詳細のルールなのだ。じつは私、かつて国産メーカーが「燃費」を一番のウリにしていたころ、雑誌のCARトップに所属しており、毎月のようにエコランに明け暮れた過去がある。そう、3代目プリウスや2代目インサイトが登場したり、アルト エコ(名前がもう時代を表している!)、ミライースなどが続々とリリースされたころだ。燃費をメインに据えた記事は人気があり、編集部内でも、そしてジャーナリストとも競って腕を磨いた……と思っている。

 この時代、自動車メーカーもメディア向けにエコラン大会を多数開催し、その甲斐あってか私は何度も優勝を果たすことができた。というわけで、エコランには少々自信……はないのだが、エコラン奉行的な小うるささはある、って文字にすると、単なる面倒くさいヤツな気もしてきた。

 さて、話を元に戻すと、そんなエコラン奉行の私から見ると、このルールはかなり厳しい。何しろグーグルマップで調べた走行距離は800kmにも達する。ほぼすべてを高速で走行するとはいえ、休憩などを挟めば10時間以上はゆうにかかるだろう。その間、普通の走行の何倍も右足と周囲の流れに神経を使うエコランをし続けなければならないのだ。かねてから「エコランってのはなぁ」と編集部で吹聴してしまっていたので(後悔)、編集部員はもう「石田さん、いっちょやっちゃってくださいよ!」「期待してますよ! フランスへGOですね」「圧勝してほかのチームをドン引きさせちゃったりして」と、たまたま幼なじみに大谷翔平がいてお盆の帰省時期にチームに加わってくれた草野球チームのごとくのノーテンキな会話で盛り上がっている。

「あ、ところでね、1台伴走車が可能なので、カメラマンの宮本と先導しつつ、道路情報などを無線で連絡してもらいたいんだよね。なので誰か1名……」。

「……」「……」「……」。

 急に黙り込む面々。しばしの沈黙ののち、だが目の前にいるのが編集長であることを次第に思い出した彼らは、「……今日中に決めてご報告いたします」と、フレンドリーな編集部にあって突然の堅苦しい敬語で話すのだった。

「あ、じゃあよろしくね!」、と言い残し会議室を出て行く私の背から、「ジャンケンで負けたやつが……」というセリフがうっすら聞こえてきたのは言うまでもない。

 30分後、私のデスクの前にややうつむき加減で立ったのはひかぴ(乾)とカメラマンのけんけん(宮本)だった。

「私が同行します!」と元気に言ってのけるひかぴ。まるで率先して志願したような雰囲気を出してくれるだけでありがたい! だがきっと、壮絶なるジャンケンバトルに負けたのだろう、スマンな、ひかぴ!

「フランス、行け……るんですよね?」と、ホンキっぽい表情のひかぴ。

「いやそれはムリでシルブプレ」と心のなかで呟くのが精一杯だった。

 そして迎えた本番。せっかくなので伴走車にはガソリン仕様のルーテシアを用意。伴走車は2人乗車などの条件は異なるが、それでもE-TECHとガソリン車でどのぐらい燃費が異なるのか、楽しみだ。早朝の5時にクルマを受け取ると、ナビに従ってスタート! 首都高に乗るまでのわずかな区間だが、市街地はアクセル操作に気を付けると、メーターにEVマークが点灯してモーターのみで走行できる。もちろんドライブモードはエコ、そしてエアコンはオフ、メーター照度も一番暗くしてモニター画面も消しての走行だ。

 高速に入ると伴走車の助手席に乗るカメラマンのけんけんから無線で交通情報が入る。「渋滞はないですね!」、早朝出発にしたかいがあった! 基本一番左車線を流れに乗って、80〜90km/hで走行する。ルーテシアの場合、平均燃費と瞬間燃費が一緒に表示できるため、メーターは常にその表示にしておき、瞬間燃費の数値を気にしながら走り方を考える。

 エコランというと、できるだけゆっくり走ればいいと考える人もいるけど、色々な意味でそれは違う。高速道路は基本最低速度が60km/hと決められているから、それを下まわらないのは当然として、流れがいい場合は80km/h程度をキープしないとまわりの迷惑にもなる。俗にいわれる「エゴラン」になってはダメ。このあたりは荷物を積んでいるであろう大型トラックにうまく混ざって走れば、概ね80km/h前後がキープできる。

 加えて、遅く走れば燃費にいいというものでもない。80km/h付近を基本に、下り坂はジワジワと加速して、その後の上りは勢いを利用しつつ少しずつ速度を80km/hあたりまで落としていくなど、道路状況に応じて速度を調整して走る。と、これがこれまでのエコランで培った基本。

 ところが、ルーテシアE-TECHは12通りとも言われる変速パターンを持った、オリジナルのトランスミッションを積んでいて、かつマニュアル変速ができない。「あ、どう考えても低いギヤだな」と思うシーンで、エンジン回転が高まって瞬間燃費計の数字が跳ね上がっても(ルーテシアの表示単位は、L/100kmなので数字が少ないほど燃費がいい)、アクセルの踏み方で変速を促すしかないのだ。さらに、基本走りっぱなしの高速で、いかにしてバッテリーに充電して必要なところでEVモードに入れるかが重要な様子。

 そんなこんなで200kmあたりまでは走り方を工夫しながら走行。その後はなんとかE-TECHと仲良くなれたようで、燃費よく走るコツがわかってきた。


石田貴臣 ISHIDA TAKAOMI

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読書(ミステリーが主)、TVでのサッカー観戦(バルサ/PSG/アルゼンチン代表/UCL全般)、映画鑑賞
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