2位じゃダメな理由はなに? 自動車メーカーが「販売台数No1」を意地でも獲得したい事情 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■「販売ナンバーワン」という謳い文句はクルマ販売の現場において鉄板だ

■ライバルが不在の車種では「ナンバーワン」を謳いやすい傾向にある

■多くの人はまわりと足並みを揃える傾向にあるのでこの謳い文句は有効だという

「販売ナンバーワン」を謳う理由を聞いてみた

 ダイハツの販売店では「軽自動車の販売ナンバーワンは譲れない」と言う。

 理由を尋ねると以下のように説明した。「軽自動車はボディサイズやエンジン排気量が全車共通だ。しかも人気が(全高を1700〜1800mmに設定した)スーパーハイトワゴンに集まり、外観が似通って見える。車内の広さも大差ない。価格も同程度だ。しかも軽自動車には、クルマに詳しくないお客様も多く、車種を決める時に迷いやすい。この時に販売ナンバーワンが選択の決め手になる」。

 同様の話はスズキの販売店からも聞かれる。「以前のスズキは軽自動車の販売1位にこだわり、乱売してムダも生じた。そこで今は小型車にも力を入れ、軽自動車の販売1位ではなくなったが、トップを取り戻したい気持ちはある」。

 ライバル車とは違う明確な個性が備わり、それによって好調に売られているなら、販売1位を誇示する必要はない。たとえばアルファードは「Lサイズミニバン販売ナンバーワン」とは宣伝していない。強烈な豪華さによって販売が好調で、その地位はもはや脅かされないからだ。

 しかしホンダN-BOXは、軽自動車の販売ナンバーワンを宣伝に使っている。2022年のN-BOXの販売台数は20万2197台で、軽自動車で2位のダイハツタントは10万7810台だから、約2倍の差を付けた。ダイハツ・タントや3位のスズキ・スペーシアが販売台数でN-BOXを抜くことはほぼ不可能だが、それでも販売ナンバーワンを宣伝する。

 この背景には、ライバル車との差が縮まる危機感がある。アルファードとエルグランドの間には、商品力の大きな隔たりがあるが、N-BOX/タント/スペーシアは接近している。そこでN-BOXは販売ナンバーワンで差を保とうとする。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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