試作車では小型ロータリーエンジンを発電機として使用
発電機としての細かな設定は、はっきりと覚えていないが、走行速度が10km/h以上になると発電機(ロータリーエンジン)が動きだす設定で、エンジンは定常回転による作動だった。エンジン回転数は、音から判断する限り低速回転域での設定で、4人乗車で走らせたが、ドライバーシートには運転音はほとんど伝わってこなかった。後部座席に乗った人に聞いたところ、エンジンが回っているのはわかったが、まったく耳障りではなかったとのこと。
このデミオの試乗車(試験車)は、発電機用に9リッターの燃料タンクを装備していたが、EVとしての航続距離設定が200kmだったことに対し、小型ロータリーエンジンを発電機として使い、充電しながら走った場合は、ちょうど倍にあたる400kmの航続距離が得られたという。
発電機として活用するため、大排気量である必要はなく、デミオEVの場合も330ccの排気量設定だった。当然、単気筒(シングルローター)で事足りる排気量だが、回転バランスに優れたロータリーエンジンを縦方向に搭載して低速回転で運転する手法は、じつに効果的で斬新だと思わされた。これがレシプロエンジンなら、単気筒で足りる排気量だが、エンジン振動の点ではロータリーに及ぶべくもない。2気筒でもかなわないはずだ。
当時、実用化にあたって何が問題なのか、確認することはできなかったが、マツダはロータリーエンジンと水素燃料の相性がよいことは、かねてからの研究・開発で手応えをつかんでいた。現在のレベルで言えば、二酸化炭素を排出する化石燃料による内燃機関の使用ははばかられる状況だが、燃料が水素となれば話は別だ。無公害内燃機関として水素燃料エンジンを活用するのは正しい選択肢のひとつと言ってよいだろう。
余談だが、現在、ガソリンを燃料とする携行型の発電機がある。あれをレシプロエンジンでなく、ロータリーエンジンにしたら音、振動の点で有利になり商品価値は上がるだろう、とデミオの発電機ロータリーを眺めながらこんな思いにとらわれた。