長距離走行でドライバーを襲う「腰痛」! 地獄の痛みから解放される手段を考えた (2/3ページ)

S字ラインのキープと骨盤を立てる意識

 では、腰痛にならないためのドライビングポジション(運転姿勢)をとるにはどうすればいいか? 細かく言い出せばキリがないが、ここでは大事なことだけ覚えておいてほしい。

 なににも増して意識すべきは、背骨(脊椎)が本来描いているS字ラインのキープだ。S字ラインを正しく保つことで上体の重さが均等にかかり、椎間板への椎体の圧迫、つまり、神経が刺激されることによる痛みが防げるのだ。

 具体的には、シートの座面と背もたれの間にお尻を密着させて深く座ること。そして背筋を伸ばすこと。日本人は背骨が前方に向かって大きく湾曲した “猫背”の人が多く、腰痛の原因のひとつになっていると言われているが、その矯正も行うことができる。

 もちろん、体格などに適した正しい背もたれの角度調整も必須で、必要以上に倒した、ふんぞり返った運転姿勢は最悪。腰痛云々を語る以前に、運転操作自体に問題があるのはおわかりいただけるだろう。

 加えて、「骨盤を立てる」意識も大事だ。骨盤を立てるとは、骨盤がシートに対して水平の位置にあり、前傾でも後傾でもなく、体重が左右均等に乗っている状態のこと。腰をはじめとした身体への負荷を抑えることが可能。これもシートに深く腰かけ、背筋を伸ばした姿勢で骨盤は自然に立つという。

 今回の取材でお話をうかがった国産スポーツシートのトップブランド、ブリッド株式会社の代表取締役社長・高瀬さんいわく、「腰痛防止にも効果のある運転姿勢はキチンとしていて、見た目にも美しい。たとえば、パトカーを運転している警察官が参考になると思います」。

何はさておき正しいドラポジ

①ヘッドレスト

 目と耳の上端を結んだ線の延長線上にヘッドレストの中心がくる高さに上げておくのが、正しい運転姿勢をとったときのヘッドレストの位置。調節機構を積極的に利用したい。

②背もたれ

 背筋を伸ばして座ると、背中が背もたれにぴったりと密着した状態になる。当然、背もたれの角度も大事。寝かしすぎるのは、正確な運転操作の妨げになるという点でも最悪だ。

③ヒップポイント

 シートの座面と背もたれの間に隙間なく深く座るのが基本。逆に浅く腰かけた状態だと背筋を伸ばすことができず、不安定な姿勢に。腰に余計な負荷が加わってすぐに痛くなる。

④シート高

 スポーツドライビングでは、できるだけ低重心のローポジションが望ましいが、一般的に高位置に座ることで腰への負担を軽減することが可能。前方視界をよくすることもできる。

⑤ハンドルとの間隔

 両手でハンドルを握り、軽く腕が曲がった状態がもっとも操作しやすく疲れにくい。シートスライドでの前後調整や、背もたれの角度調整などで最適な位置にセッテイングしよう。

「骨盤を立たせる」がマツダ車のシートの基本

 正しい運転姿勢を保つための自動車メーカーの取り組みも見逃せない。顕著なのは、長距離移動の快適性も重要視されるドイツをはじめとした欧州系メーカーのシートで、ホールド性の高さや疲労度の少なさで高い評価を得ている。車種や車格(安価・高価)を問わず採用される高品質なシートは、今まで多くの日本車が及ばない部分とされてきた。

 しかし、ここにきてシート作りに積極的な取り組みを見せはじめた国産メーカーがある。マツダだ。

 注目は、MAZDA 3ほかマツダ各車に採用される次世代車両構造の“スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー”。「骨盤を立てる」「骨盤をキーにしてクルマをつくる」という発想から生まれた独自技術だ。

 話を端折ると、人間が本来備えている高度な能力、「歩行」からヒントを得て完成に至った骨盤を立てるシートの採用が目玉で、その目的は、自分の足で歩いているような、クルマの動きを自分の身体のように感じられる「人車一体感」にあるという。

 ボディやシャシー、タイヤなど個々のシステムより、シートを中心としてクルマのアーキテクチャー(構造)全体としてコーディネートしていることが、この新技術の名称の由縁となっている。

 今回の腰痛の話とは関係ない話のように思えて、じつは骨盤を立たせることで、背骨が自然なS字ラインを描く点は、腰痛を防ぐ着座姿勢の理想とも符合する。しかも、それをユーザーにとくに意識させることなく、操縦性の向上とも高い次元で両立した。もはや欧州車のシートを超えたと言っても過言ではないかもしれない。


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