スーパーGTで今シーズン増えた距離の長い「450km」レースは負担増!? じつはチームにもドライバーにもファンにも「いいことづくめ」だった (1/2ページ)

この記事をまとめると

■2023年シーズンのスーパーGTでは450kmレースが5戦用意されている

■メカニックなどの裏方への負担は増えるが戦略の幅が広がるロングレースは監督にとっては戦いやすい

■クルマやドライバーへの負担は少なく多彩な戦略によるドラマチックなバトル展開が期待できる

チーム関係者は450kmの長丁場レースをどう感じている?

 2023年のスーパーGTは第2戦および第4戦の富士を筆頭に、第3戦および第5戦の鈴鹿、第7戦のオートポリスと450kmレースが多い。

 各スティントを均等で分割する場合、300kmレースであればAドライバーが距離にして150km、時間にして約1時間を走行し、ピットでドライバー交代とタイヤ交換、給油を実施。その後、Bドライバーが150km、約1時間を走行してチェッカーを受けるが、450kmレースの場合はその後にもう一度、ピットストップを行い、ドライバー交代とタイヤ交換、給油を実施し、CドライバーあるいはAドライバー/Bドライバーが150km、約1時間を走行することになる。

 通常、普通車で300kmを走行した後、もう150kmを走行するのは高速道路ですらひと苦労だし、車種によっては給油を考える必要が出てくるが、極限のスピードでポジション争いを行うレースシーンではこの1スティントの追加がどのような影響をもたらすのか? また、ドライバーやマシンに対する負荷は異なってくるのだろうか?

 というわけで、第4戦の富士で、チーム監督やエンジニア、ドライバーを直撃してみた。

 まず、GT500クラスに37号車「Deloitte TOM’S GR Supra」を投入するTGR TEAM Deloitte TOM’Sの山田 淳監督によれば「450kmは3スティントあるし、使えるタイヤが2セット増えますからね。3回のスティントを均等割にしてもいいし、どこか1スティントをミニマムにして、あとの2スティントをロングにすることもできるので、300kmレースより戦略の自由度が増えます。ドライバーやクルマの仕上がりに合わせて戦略を立てられるので戦いやすい」とのこと。

 さらに、「ピットストップが1回増えるので、タイヤマンは大変だと思います。2回あるから1回ミスしてもいい……というわけではなく、2回ともミスなく送り出さないといけないので集中力が必要だと思います」と付け加える。

 その一方で、「メカニックなどの裏方とマネジメントは大変ですけど、事前の準備は300kmレースも450kmレースも大きく変わらない。たしかにガソリンとタイヤのセット数は増えるからコストも増えるけれど、鈴鹿1000kmの5スティントを考えるとラクですよね」とのことである。

 この傾向はGT300クラスも変わらないようで、61号車「SUBARU BRZ R&D SPORT」を投入するR&D SPORTの小澤正弘総監督によれば、「距離が増えて1スティント増えますからね。BRZは燃費が悪いのでピットウインドウが狭いんですけど、450kmレースは2回ピットストップがあるので戦略の幅が広がって作戦のバリエーションが増えてきます。1回目のスティントを短くして、あとの2回をロングにしたり、最初の2回をロングで引っ張って、最後を短くしたりと、持ち込みタイヤやコンディション、マシンの仕上がりで作戦を立てることができる。レースオペレーションは難しくなりますが、狭いピットウインドウのなかで戦う300kmレースより450kmレースのほうがチャンスは広がるので戦いやすくなります」と語る。

 気になるクルマに対する対策に関しては「1000kmレースのときはオイルを足したりしていましたが、450kmレースの場合は特別にやっていることはないですね」と付け加える。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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スバル・フォレスター
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