ホントに走り以外「どうでもよかった」が伝わってくるホンダ「タイプR伝説」5つ (2/2ページ)

通常のスポーツカーとは手の入れ込み度が段違いだった

3)エアコンレスが標準!?

NSX(NA1/NA2)
インテグラ(DC2/DB8/DC5)
シビック(EK9/EP3)

 先述のとおり、タイプRを象徴する軽量化策だが、第二世代以前のタイプRには、その最たるものとして「エアコンレス仕様」なるものが存在していた!

 いやむしろ、NA1/NA2型NSX-RとDC2/DB8型インテR、EK9/EP3型シビックR(つまりDC5型インテR以外)は「エアコンレス仕様」こそが標準で、エアコンはオプション設定という徹底ぶり。

 車種によっては電動格納式ドアミラーやパワーウインドウ、運転席&助手席エアバッグ、ABSもオプションまたはレスオプション設定ありとなっていたのだから、まさに公道を走るレーシングカー。「恐れ入りました」と言うよりほかにない。

 その軽量化効果は約10kg。その代償として暑さ寒さに耐えるのは、酷暑厳寒が年々厳しさを増す近年ではもはや命に関わるため、仮に現行モデルに設定があったとしても、まったく割に合わないうえオススメできない。

 だが、旧ザッカー編集部在籍時にエアコンレス仕様をたびたび試乗した筆者なら、こうも断言できる。「エアコンレス仕様ならもっといい汗がスポーツ走行でかける」と。

 現実的には、かつてホンダベルノ系ディーラーに在籍していた筆者でも、エアコンレス仕様は広報車とレースベース車以外で目にしたことはなく、大半の一般ユーザーはエアコン付きを注文していたと思われるが、それでも敢えて設定していた当時のホンダの姿勢にこそ、心から拍手を送りたい。

4)街乗りお断り!? の硬すぎる乗り心地

NSX(NA1/NA2)
シビック(FD2/FL5)

 サーキットでの速さや操る楽しさをコアバリューとするタイプRにとって、公道での快適性など二の次三の次。だから、タイプRの多くは足まわりがハードにセッティングされている。その結果、モデルによって少なからず差はあるものの、乗り心地は基本的に硬い。

 とりわけNA1/NA2型NSX-Rと、FD2型シビックR、そして現行モデルのFL5型シビックRは、路面の凹凸が大きい公道を走ると、速度域を問わず突き上げが強烈なうえ車体の上下動も激しく、首、腰とも椎間板ヘルニアを長年患っている筆者の身体には非常に優しくない。「街乗りお断り」と言わんばかりのハードさだ。

 だがそれでいい。それがいい。だからこそ、サーキットでの速さや操る楽しさを、他車を寄せ付けない圧倒的に高い次元で、実現しているのだから。

5)バーゲンプライス!

インテグラ(DC2/DB8/DC5)
シビック(FN2以前)

 ここまではタイプRが持つメカニズム面の凄さに着目してきたが、最後にそれ以外の面を見てみたい。それは、”価格”だ。

 NSX-Rはもちろん、ターボ化された第三世代のシビックRも、車両本体価格が400万円を優に超えており、免許取り立て、社会人になりたての若者がおいそれと手を出せる代物ではない。

 だが、第一・第二世代のインテRとシビックRは、いずれも車両本体価格が300万円以下。EK9型シビックRの初期モデルに至っては、東京での車両本体価格が199万8000円と、なんと200万円を切っていた(ただし「コンフォートパッケージ」を含まないエアコンレス仕様)。

 かように安価で、ほかを圧倒する速さと楽しさが手に入れられるのだから、真に走りを楽しみたいスポーツカー好きが飛びつかないわけがない。かくして当時の国産Cセグメントスポーツカー&ホットハッチのカテゴリーは、ホンダのタイプR2台(+S2000)が席巻することになるのだが、その代償として他社のライバルをことごとくモデル廃止に追いやったのは痛し痒しと言ったところか。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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