ロータリーエンジンをフロントミッドに搭載! だが次期ロードスターではない! 「マツダアイコニック SP」が示すマツダの未来とは (1/2ページ)

マツダのキーパーソンに見どころを聞いた

 ジャパンモビリティショー2023におけるマツダのプレスカンファレンスは、社員3人、それぞれのスピーチから始まった。営業や技術、SeDV担当と、職域はそれぞれ違えど「クルマのある人生」を自ら楽しみ、顧客のそれを支えていくという。

 あとを継いで壇上に立った毛籠勝弘社長は、「いいクルマのある人生は豊かな人生」であり、「マツダはクルマが好きだという感情を育みたい、そういう社員が大勢いる」と語った。人を中心とする開発哲学を掲げるメーカーとして、共感を呼び込むための大いなるイントロといえた。

マツダの毛籠勝弘社長

 かくして本邦初公開、というか当然ワールドプレミア発表としてアンヴェールされたコンセプトカーが、「マツダアイコニック SP」だ。パワートレインなど、スタイリング以外の詳細は伏せられたままのミステリアスなコンセプトカーだが、イメージ動画には2つのロータリーが回転するシークエンスがはっきり挿入されていた。当然、MX-30で発表された「ロータリーEV」に準ずる、PHEVパワーユニットだろう。

マツダアイコニック SPのフロントスタイリング

 コスモスポーツから歴代RX-7、そして世界で累計120万台以上が販売されたロードスターまで、いつの時代もスポーツカーと走る歓びがブランドの根底をなしてきたマツダの、今現在の集大成であり、未来へのマニフェストともとれる。

マツダアイコニック SPのリヤスタイリング

 ほかに展示車両はNAとND、新旧のロードスターに、ほぼ正確な3分の2スケールで再現されたロードスターと大画面による子どものためのドライブシミュレーター、もちろん大人用のシミュレーターも数台用意されている。

マツダ・ロードスターのキッズカー

 執行役員 R&D戦略企画本部長の佐賀尚人さんは、今回の展示テーマをこう説明する。

「今回、東京モーターショーからジャパンモビリティショーに変わった節目に、注意を払ったのは単なる新車発表の場ではないこと。モビリティの良さを発信することを起点に、同時にマツダとして毛籠社長の新体制下に会社としてのパーパス、社会的な意義を定義し直していました。それが、『前向きに今日を生きる人の輪を広げる』こと。どうしても自動車メーカーは技術が先行しますが、詳しくなくても毎日のようにクルマに接しているお客様も多いですよね。マツダはまだまだ一般の方に知られていませんし、『クルマ好き』という限られた層だけでなく、『クルマが好き』という感情を、魅力を伝えたい」

R&D戦略企画本部長の佐賀尚人さん

 あえて“クルマ好き”という限られた層だけではなく、“クルマが好き”という普遍的な感情に働きかけたいと、佐賀さんは強調する。

「クルマはこの先もモビリティのなかで存在し続けますが、ただ走るだけの移動体ではありません。家族とのドライブの思い出とか、子どもがミニカーで遊んだりとか、そういう感情をのせるものであり続けたい。そこから作る未来だと思うんです」

 電動化が進むほどにクルマはコモディティ化され、バッテリーを床下に積んでレイアウト効率を求めていくとBEVは無機質なものに収斂されていくかもしれない。だからこそアイコニック SPのようなスポーツカー・コンセプト、別の言い方をすれば好き、感動、感情を育み、魂の宿るものは、画一的な表現じゃないところにあるはずと、佐賀さんは続ける。

R&D戦略企画本部長の佐賀尚人さん

 ただ“クルマが好き”目線で、このコンセプトが次なる市販スポーツカーか? と問えば、佐賀さんははっきり否定する。

「次世代ロードスターのつもりで作ってはいません。いまの技術でこんなクルマができたら楽しいよね、そういうクルマの楽しさを伝える表現としてスポーツカーを選んでいます。とはいえ骨格や技術の要素はきちんとスタディしていています。スポーツカーらしい人馬一体の感覚は全長4.2m以下で、走りの楽しさは4㎏以下のパワーウエイトレシオが条件だと考えています。乗り手をクルマの中心に配したいので、2ロータリーは縦置きでフロントミッドシップです」


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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