3列シートの上級SUVが300万円以下って超破格! お買い得の極み「マツダCX-8」はなぜ消えるのか? (2/2ページ)

マツダは今後、プラットフォームを一新する

 この背景には、マツダのプラットフォームの再構築がある。以前のマツダのプラットフォームは、ロードスターを除くとすべて前輪駆動だった。それを今後は、コンパクトとミドルサイズは前輪駆動で、Lサイズを含めた上級車種は後輪駆動に切り替える。そして上級の後輪駆動車には、直列6気筒エンジンも搭載する。日本で販売する後輪駆動プラットフォームの車種は、CX-60、CX-80、次期マツダ6だ。

 CX-8と入れ替わりに投入されるCX-80は、後輪駆動SUVの主役になる。ちなみにすでに販売されているCX-60では、乗り心地の硬さが指摘された。それはCX-60が後輪駆動のプラットフォームを使うSUVのスポーティなショートバージョンに位置付けられるからだ。従って、本命のCX-80が登場しないと、後輪駆動によるプラットフォームの真価はわからない。

 ただし、CX-80はボディが相当に拡大する。直列6気筒エンジンを搭載できる後輪駆動のプラットフォームは、CX-60を見ればわかるようにボンネットが長く、そこにCX-8と同等以上の3列シートを備えた室内空間を組み合わせるからだ。

 CX-60の場合、車内の広さはCX-5と同程度だが、後輪駆動の採用に伴って全長は165mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は170mm上まわる。このボディの拡大をCX-8とCX-80に当てはめると、後者の全長は5090mm、ホイールベースは3100mmに達する。

 海外で販売されている後輪駆動のCX-90は、CX-80と共通のプラットフォームを使った3列シートのSUVで、全長は5120mm、ホイールベースは3120mmだ。CX-80もこれに近い大きさで、全幅だけはCX-60の1845mmに近い数値まで狭める。

 それにしても全長が5mを超えるSUVは、日本車では珍しい。トヨタランドクルーザー(300)でも、全長は5m以内に収まる。日本の使用条件では、前輪駆動の採用で空間効率を高め、全長を4925mmに抑えたCX-8が扱いやすい。

 後輪駆動ベースのCX-80も上質なSUVに仕上がるが、ボディは大柄で、売れ筋の価格帯も450万円以上だろう。CX-8で豊富に用意される300万円台のグレードは、選べたとしても装備のシンプルな廉価グレードに限られる。つまりCX-8にも存在価値があったと言える。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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