1年を待たずに街行くクルマがガラッと様変わり! 日本車王国だったタイに中韓BEVが溢れている (2/2ページ)

数カ月で状況がころっと変わる新興国の自動車トレンド

 ちょうど本稿を執筆する少し前に、タイのセター首相が日本のメディアとの会見において、日本のBEV開発への遅れについて懸念を示したということが話題となった。

 タイ政府はBEVをメインとしたNEV(新エネルギー車)の普及に積極的である。都市部の大気汚染問題改善や原油輸入量の削減といった側面でも国内でNEVの普及をはかりたいのだが、それ以上にタイ政府は、日本をはじめとした外資ブランド車の生産工場の誘致を行っているのである。

 前述したタイに進出している中国系ブランドも、ほとんどが2024年中にタイでの現地生産を開始する予定となっている。そのような中国系の動きのなかで、「日本はどうするのか?」というタイ政府の思惑があっての首相発言だったのかもしれない。

 タイ政府は中国政府との関係を非常に重視している。中国系メーカーの動きは、即中国政府の思惑と見ていいだろう。すでに中国系7ブランドが進出しているなかで、日本メーカーは今後どのようにタイ市場でNEVを展開させていくのだろうか。ちなみに韓国ヒョンデ自動車も今回のバンコク・モーターエキスポにて、BEVのアイオニック5をタイ市場で正式発売させている。タイの首相が抱く懸念は、いまや多くの人が抱くものなのかもしれない。

 筆者はバンコク中心部の大通りで行き交うクルマをウォッチングしている。2022年にバンコクを訪れたときは、中国系BEVというとMG ZS EVを多く見かけたのだが、今回はBYD ATTO3や同ドルフィンを圧倒的に見かけることとなった。

 タイ国内での2023年1月から8月までの累計での車名別新車販売台数ランキングをみると、1位はBYD ATTO3で1万4314台となった。2位のNETA Vが8440台なので、ダブルスコアとまではいかないが大差をつけてのトップとなっている。

 ちなみにMG ZS EVは8位。2位にNETA Vが入っているのも驚きを隠せないトピックとしている。NETA Vは航続距離などのスペックを絞り込み、その分お値打ち価格を実現させた「ローコストBEV」と呼ばれるモデル。タイでは意外なほど複数保有が多いこともあり、通勤用などで“お試しBEV”として購入する人も多いようである。「見た目のスタイルはけっして格好いいものでもありませんし、ここまで売れるとは思っていませんでした」とは事情通。

 BYDがここまで勢いがあるのは、現地で独占的にBYDディーラーを展開している地元のパートナー企業の巧みな戦略も功を奏しているようである。地元の報道では、すでに日系ブランドからBYDへ看板のかけかえを行ったディーラーもあるとのことである。

 MGは、トップ10のなかに同社BEVが4台入っており「幅広く売れている」と表現することも可能な状況となっている(BYDは現状ATTO3とドルフィン、そしてシールのみ)。直近でMGは「マクサス9」という9人乗りの大型ラグジュアリーBEVミニバンを発売しており、こちらもかなりの勢いで街なかにあふれ出している。

 BYDも2023年春に開催した「バンコク・モーターショー」にて大型ラグジュアリーEV(BEVとPHEVがある)ミニバンとなる「デンザD9」を参考出品しており、近々タイでも販売開始するのではないかといわれている。

 タイの街なかではまだまだアルファードがかなり多く走っているものの、ヒョンデ・スターリアやトヨタ以外のとくに東アジアメーカーのミニバンが、アルファードを包囲しよう(包囲したい?)とする動きも見えている。

 2023年3月に続き、2023年11月末から12月上旬にバンコクを訪れようと思ったのは、バンコクへ行けば3月とは違った風景を見ることができると思ったこともあった。実際に訪れてみると、3月とはまったく異なった風景が広がっていた。とくに新興国では日本の2倍3倍も速いスピードで社会が変化している。次は2024年3月にバンコクを訪れる予定だが、たった3カ月であっても見えてくる光景は異なるものになると考えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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