この不便さはワザとなのか? 快適さを捨てた苦行の先に「圧倒的な快楽」が感じられるクルマ5選 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■少しくらい不便でもほかのクルマでは満足できないほどの世界観を持ったクルマがある

■痩せ我慢して乗るからこそ最高の世界が見られるクルマをご紹介

■ちょっとくらいダメなところがあるからこそひとつの魅力がより際立つという意見もある

快適ではない、でもおもしろい!

 ふた昔くらいまでは、開発者が「こうあるべし」という理想を追い求めていくクルマもまだまだ多かったものでした。それゆえ、カッコいいんだけど使い勝手はいまひとつ、速いんだけど乗り心地はとんでもない、というようなクルマがたびたび登場。本当に乗りたいなら、ちょっとくらいの不便さには目をつむってもいい、その代わり、ほかのクルマでは満足できないくらいの世界が見られたのです。

 いつの間にか、クルマづくりはマーケットインが主流となり、多くの人が求める便利さ、快適性を優先して進化。いまではなかなか、そうした「いまひとつなところ」が見当たらないクルマがほとんどになりましたね。今回は、いまからでも手に入れたい、痩せ我慢して乗るからこそ最高の世界が見られるクルマをご紹介したいと思います。

 1台目は、不便極まりないけど究極のライトウェイトスポーツの世界に浸れるクルマといえば、ケーターハム・スーパーセブンです。フォーミュラマシンのような細長いキャビンに、4つのタイヤが剥き出しでついている、ふたり乗りのオープンカー。

 でも、丸いヘッドライトがぴょこんと飛び出したフロントマスクはどこか愛らしさもあり、かっこいいけど憎めない、手作り感あふれるスポーツカーです。最大の特徴はその軽さ。ボディにはドアさえなく、大袈裟ではなく本当にハンドルとシートとペダルがあるくらいの室内で、車両重量は500kgを切る440kg(SEVEN170)というから驚きです。ふたり乗りだけど、全幅1470mmなのでふたり乗ったらかなりギュウギュウ。荷物を置く場所もありません。

 晴れてる日はいいのですが、厄介なのは雨の日なんです。一応、キャビンをまるっと覆うことができる幌があるのですが、装着はすべてボタンで留める手動で、これをつけてしまうと乗り込むのがまた一苦労。足から入ると間違いなく頭が入らないので、お尻から落とし込んでいくのが正解なのですが、体が硬い人はちょっとキツイかもしれないですね。

 また、幌を積んで出かけるのはスペース的に難しいので、出発の時には晴れていて、途中で雨が降ってしまったときには濡れる覚悟も必要。ちょっとバイクに近いスポーツカーといえるでしょう。

 それでも、路面スレスレを走る感覚や、500kg以下の軽さがもたらすロケットのような加速感、手足のように操れる楽しさは、一度乗ると病みつきになるかも。

 2台目は、スーパーセブンとはまた違った意味で厄介というか、奇想天外な操作が多くて一見さんはドアを開けることさえできないTVRタスカン。イギリスのバックヤードビルダーであるTVRが2000年代に日本でも販売したスーパーカーなのですが、まずデザインからしてとっても変わっています。

 波打つようなFRP製のボディに、6つ目のヘッドライトが深海魚を思わせるフロントマスク。前後に分割されたボンネットは、隙間がエンジンの熱を逃すエアアウトレットとなっているという、「これ、ぶつけたら直すの大変だろうな」と思わせるデザインです。

 そして、乗り込もうとドアを開けようとして愕然。ドアノブもボタンも見当たらないではないですか。3人がかりで30分くらい探してようやく、サイドミラーの下にあるボタンを押すと開いたという苦い経験もありますが、降りるときにドアを開けるのもまったくわからず。正解はオーディオの脇にある小さなボタンを押すと開いたのでした。

 インテリアも奇想天外なのですが、SF映画が好きな人にはもしかするとたまらない空間かもしれません。4リッターの直6エンジンで350馬力のタスカン・スピード・シックスと、390馬力のタスカンSがあり、その走りも最初はジャジャ馬。だんだんならしていくのが楽しい人には、これまた垂涎のクルマかもしれないですね。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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