自動車のプロはどうやって愛車を選んでいるのか? ハズさないクルマ選びのコツを聞いてみた (2/2ページ)

試乗した瞬間に「肌に合う」モデルが存在する

 前述したインサイトのように飛びぬけて特徴的なクルマでない限り、たいていのクルマにはライバルモデルが存在している。自動車メディアでは、そうしたライバル同士の燃費や速さ、寸法に価格などをロジカルに比較して、どちらが優れていると評価しがちだが、そうした条件がクルマの魅力すべてをカバーしているとはいえない。数値では表現しづらい要素もあれば、スタイリングやボディカラーのように好みに左右される要素もある。

 もし、ライバル比較のなかで、どれか一車種にしかないオンリーワンの機能や要素があったとしたら、そもそも比較項目として成立しないともいえる。

 愛車選びにおいても、同様にカタログスペックを比較したり、ディーラー試乗などで乗り比べてみたり、シビアに交渉した価格によってコスパを計算してみたりといった比較をすることだろう。しかしながら、そうしたロジックで選んだクルマでも満足できないことがある。そうしたときに「あっちにすれば良かった」と思わないためには、自分の好みやニーズに合った「替えが利かない」要素を持っていることがポイントになると思う。

 そうした自分だけの評価ポイントとして、意識してほしいと思うのは「クルマとの相性」だ。機械と人間において「肌に合う・合わない」が存在するのは不思議なことだが、個人的には間違いなく「肌に合うクルマ」というのは存在している。

 自分の車歴でいえば、1990年代に乗っていたスズキ・ワゴンR(初代)はまるで体の一部のように扱えるという意味で肌に合うクルマだった。それと似た感覚は現在の愛車であるエブリイバンでも感じているのだが、不思議なのはスズキ車であれば相性がいい、とはいえないこと。2000年代に「泣く子も黙る79万円」のキャッチコピーで話題となった初代スイフトに乗っていたこともあるが、このクルマは最後まで馴染むことができなかった。

 そんな相性の良し悪しは乗った瞬間に感じることも珍しくない。

『コラムニストは取材しないジャーナリストである』を自分に当てはめると、『自動車コラムニストは試乗をしないモータージャーナリストである』となる。そのため、新車試乗をする機会は少なめなのだが、それでも過去に「新車試乗取材においてあまりにも肌に合うクルマだったので購入に至った」というモデルがあったりする。

 具体的には、ホンダのコンパクトミニバン「フリード(現行型・ガソリンエンジン車)」とトヨタ・クラウン(12代目ゼロクラウン、3.5リッターエンジン搭載車)は、まさに肌に合う感じがよすぎて買ったモデルだった。自分に相性がいいクルマというのは、けっしてカテゴリーや駆動方式、メーカーといった要素では判断できないのは、自分のことながらおもしろい。

 その意味では、皆さんが愛車を選ぶ際にも「スポーツカー以外はあり得ない」だとか「利便性からミニバン一択」と、対象を絞り過ぎないほうがいいと思う。広い視野でクルマを見ていくことで自分や家族にとって相性の良いモデルに出会えるかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

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