これは歴代最高のデキじゃないか? ブランド自体も忘れ去られ気味なランチアの新型イプシロンのデザインをプロが徹底チェック (2/2ページ)

歴代イメージに新しいモチーフを持ち込んだ新型イプシロン

 先代比で245mm長く、85mm広くなったものの、いままでと同様に欧州Bセグメントとして再出発する新型は、昨年発表されたコンセプトカー「Pu+Ra HPE(プーラ)」のモチーフをとり入れたもの。すなわち、ピュアでラジカルという相当に尖ったデザインテーマを投下したわけだが、よく見ると基本のシルエット自体は、意外なほど常識的なことに気付かされる。

 では、新型のデザインは退屈なのか? といえばそんなくことはなく、新しいデザインテーマによる「味付け」が見所といえそうだ。

 フロントから見ていくが、ここではコンセプトカー同様にランチア伝統の楯形グリルを再解釈した「カリス」と呼ばれるブラックのパネルと、Y字形のシャープなデイタイムランニングランプが特徴だ。

 このカリスは、円をモチーフとしたコンセプトカーほどのインパクトはないが、実用的なコンパクトカーの「顔」としては十分個性的であろう。左右に離されたヘッドライトはカリスを邪魔しないため? と思えるが、これが新生ランチア共通の顔になるかは、今後のお楽しみとなりそうだ。

 ボディ側面は、何といっても大きくカーブを描くショルダー面が見所だ。歴代も後ろ下がりのラインだったので、リヤビューにはその面影が残っている。コンセプトカーほどの張り出しはないし、特徴的なフロントフェンダーの黒いパネルもないが、ここも実用コンパクトとしてはいい落としどころだと思える。

 この張りのある豊かな面は、同じく余計なラインのない滑らかなボンネットと組み合わさることで、クラスを超えた優雅さを感じさせてくれる。

 最後に、リヤの尻下がりの面に突き出すブラックのガーニッシュと丸いテールランプはコンセプトカーのイメージをうまく再現しているように見える。このランプは「ストラトス」をオマージュしたそうだが、フロントのブラックパネルと相まって、ボディ全体の引き締め役にもなるはずだ。

 さて、あらためて新型イプシロンのエクステリアをチェックしたが、読者の皆さんはどのように感じられただろうか? コンセプトカーが魅力的だと市販版でガッカリ……なんてことが多いなか、トータルイメージの再現としては巧くまとめているのではないだろうか。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
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筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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