3代目オーナーは単なる御曹司ではなくかなりのやり手
次いで2001年になると、ベンチュリーはモナコの大富豪、ギルド・パランカ・パストールなる人物によって買収され、冒頭のようなEVや南極冒険に手を広げることに。このパストールさんはなかなかの人物で、1967年にモナコで生まれるとフランスで法律、イタリアで経済学、米国ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学で不動産建設を学んだという文字どおりの御曹司。
ですが、1985年から1999年までレーシングドライバーとして活躍し、1995年にはブガッティEB112で氷上速度記録を樹立。最高速度は315km/h、平均速度は296km/hといいますからお坊ちゃんといい捨てられる人物ではありませんね。
ベンチュリーを買収後も、水素燃料電池を搭載した速度記録車「VBB」なるマシンを開発し、2016年には最高出力2200kW(2950馬力)の最新鋭の電動バージョンであるVBB-3が、FIA公認の549km/h(341mph)という世界新記録を樹立するなど、イノベーティブな活動に余念がないようです。
また、古のベンチュリーに敬意を表したか、数々のEVコンセプトカーも魅力的なものが少なくありません。
たとえば、2004年に発表されたFETISHはベンチュリーで独自開発したリチウムイオンポリマー電池を搭載した2シーターのオープンモデルで最高出力220kW(300馬力)、0-100km/hが4秒、航続距離340kmを実現しています。
そのほか、ミシュランと共同開発した全輪駆動EV(各輪にモーター装備)VOLAGEや、太陽光と風力発電双方に対応した都市型自立走行車ECLECTICなどなど、単なる金満メーカーとは思えない行動力、開発姿勢を見せつけているのです。
そして、ベンチュリーはフォーミュラEへ最初にエントリーしたチームでもあります。2022年には8勝をあげ、2021-2022シリーズでコンストラクターチャンピオンシップ2位という快挙を達成。これにはパストール氏も大喜びに違いありません。
シトロエンのEVや極地探検EVも楽しそうですが、やっぱりベンチュリーにはスポーツカーやレースの面影を失ってほしくはありませんからね。
コンベンショナルなスポーツカーメーカーから、いまでは最先端をいくEVベンダーとなっているベンチュリー、彼らの動向はこれからも目が離せそうにありません。