2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか? (2/2ページ)

1年目の開催を経て見えてきたフォーミュラ・ジムカーナの意義

 では、フォーミュラ・ジムカーナは、競技を通じて自動車関連企業の、新たなリクルートの場になろうとしているのか? TGRの宮内氏が、説明する。

「もしかすると、『タダで競技に出られて、いい場を提供してもらって、ありがとうございました』で終わってしまう関係もあるかもしれません。でも10年、15年後の自分たちの仲間がいるかいないか、それは見極めたい。5年後、10年後の自動車業界に自分の力が要るんだと、気づいてくれる学生もいるかもしれません。どう取り組んだらいいか、競技に挑むなかで考え方や問題解決の質が上がっていく、そんな育成の意味合いもあるかもしれません。自動車が好きで熱い気持ちはあっても、他の業界に進む学生もいるかもしれませんが、できれば仲間になって、盛り上げるこちら側に来て、中心メンバーになって欲しいところです。すべて『かもしれません』なのは、自発的にそうなってくれるかどうかは学生ひとりひとり次第ですから」。

 いまのところ、車両提供はヴィッツGRMNのみで、トヨタによるワンメイク大会かつ人材発掘の場のようにも見えかねないが、決してそうではない。トヨタGAZOO Racing Companyは旗振り役ではあったが、完成車メーカーの協賛企業には日産とマツダも名を連ね、それぞれのメーカーからFFでない駆動方式の車両提供も鋭意検討中だ。また、すでに協賛しているサプライヤやパーツメーカー以外からも、多くのオファーが寄せられている。

 エントリーは大学の公認団体であることが条件とはいえ、学生向けのフォーミュラという特殊な枠組みだからこそ、田中氏は企画自体を一緒に考えたいと述べる。

「どんなことをしたいのか? こういうことをやったらいいんじゃないか? 運営にも主体的に、一緒に実現するにはどうしたらいいか、どう周囲を巻き込んで盛り上げていけるかを考えて実行できるよう、関わってきてほしいですね」。

 昨年のプレシーズンからも、社内外でさまざまな反響があったことを、石井氏と宮内氏は次のように捉えている。

「ほかのレースで協賛いただいているサプライヤー企業さんからも、興味を寄せていただいています。社内でも反響は大きく、就職イベントなどタッチポイントは各部署それぞれありますけど、自動車メーカーとして求める層に近いことは確かだろう、と。一般イベントとしてショッピングモールなどで車両展示をしたりするのとは、また異なるアプローチです。スポーツカーを展示すると、それこそ隅々まで舐めるように見てくれたりするので(笑)。もってきてよかったなぁ、と思いました」。

 プレシーズンの反響をふり返りながら、岩田氏は運営の意義を、次のように締め括る。

「やはり真剣に競技に取り組む以上、失敗して悔しくて涙を流している学生もいました。感情が表に出るほど打ち込んでいる、そのリアルな姿が会場で見られたことを評価したいです。やらされている競技なら、無感情のはずですから。仲間と、失敗したらごめん、成功したらやった、という感情を分かち合う姿は、打ち込んでいる証拠ですよね。真剣にプレーして、新しく得た発見や経験を、大人なり企業なりに言葉で伝え、クルマ好きをベースにした輪は、クルマの話題で盛り上がれるもの。そこに未来の希望があると感じました。フォーミュラ・ジムカーナで知り合った学生たちが、違うイベントの手伝いに来てくれるんですよ。そこには何かしら、気もちがあると思います。ここに来る人たちは世代を超えてレース好きで、携わっている人ですから」。

 予選会や全国大会では一般観客の入場も受け入れるため、箱根駅伝での沿道の声援ではないが、観客も楽しめる学生スポーツの新しいカタチとして、昨年以上の盛り上がりに期待がかかる。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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