この時代でも「粘土」が重要! ホンダのデザイナーが語るカーデザイン現場の「デジタル」と「アナログ」の協調 (2/2ページ)

実寸大のモデルを見ないとわからないことも多い

●デジタルは有効だが決して万能じゃない

──では、あらためてお聞きしますが、デジタルが導入されたことによってモデル業務はどのように変化しましたか?

「そもそもの導入目的は “機種開発を効率的に推進するため” なので、その点では目的を達成できていると思います。デジタル開発が普及・進化したことにより、海外スタジオとの共創や開発状況の共有などがタイムリーに行えますし、CGによる比較検討などもグローバルで一同に行えるなどメリットは多岐に渡ります」。

──デザイン自体への影響もあるのでしょうか?

「はい。最近ではデジタルとフィジカル(クレイ)を目的に応じて使いわけているのですが、デジタルモデリングを介してからクレイで再現したところ、これまでのハンドワーク(クレイ)による造形概念ではできなかった、見たことがない斬新な造形表現に繋がったことが最大の驚きと収穫でしたね」

──デジタルでこそできた造形だけど、それがクレイじゃないとわからないというのが興味深いですね。これだけ聞いてもクレイモデルの重要性がわかります。

「そうですね。デジタルモデリングでの可視化は十分できているのですが、課題はふたつあって、ひとつはデータだけでは善し悪しの確信がもてず、最終判断がでないこと。もうひとつは制作の途中段階をクレイのようにほかの人と共有、コミュニケーションできないことなんです。そこの部分をクレイモデルで補完し、お客様への『喜び』を最大化することが重要になります」

──では最後に。今後のモデリングに求められることについて教えてください

「クレイでもデジタルでも可視化することはすでに確立されています。そこで必要になるのがモデラー自身の『気づく力』です。“スケッチのどこを見るべきか、モデルを昇華させるために何をすべきか” 、それを見極められる『気づく(ける)力、高い質をもったモデラー』を今後どれだけ育てられるかが非常に重要になります」

──デジタルの部分はどうですか?

「先のとおり “造形判断やコミュニケーション”の観点から、フィジカルと同等の次元に引き上げることがデジタル推進の課題と言えます。その点、もともとホンダのモデラーには、難度の高い法規・設計要件を『斬新なデザインに繋げるためのチャンス』と捉え、主体的にデザイン展開するという強みがあります。今後は、フィジカル・デジタル双方の強みを上手く融合させることでホンダデザインの『驚き』『感動』の昇華を進め、お客様の“喜び”の最大化に繋げていきたいと思います」

──いずれにしてもデジタルとクレイの次元の高い融合が必須のようですね。本日はありがとうございました。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

愛車
いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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