小規模メーカーながら走りもデザインも一級品
そんな革新的な手法で作られたゼノスE10は、聞けば聞くほどしっかりしたスポーツカーに仕上がっています。車重は700kgに抑えられ、フォード製4気筒DOHCエンジンをミッドに横置き。NAのE10は200馬力、エコブーストターボを搭載するE10Sは250馬力といいますから、いずれにしても十分なパワーといえるでしょう。
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両タイプともにアルマイト加工を施したアルミ押し出し材でメインフレームが組まれたほか、フォーミュラマシン並みのロングアームをもったダブルウイッシュボーンサスペンション、これはプッシュロッドを用いたインボード構造であり、緻密なセッティングはもとより、街乗りでの乗り心地まで視野に入れた設計となっています。アルコンやタイタン、さらにはビルシュタインといったパーツメーカーとのコラボレーションも行われ、ゼノスは少ないリソースながら最大限の効率を発揮しているようです。
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さらに、現代イギリスは特殊素材の多用も得意技。コクピットはハニカム構造のカーボンコンポジット素材が用いられたほか、BMW i3などが採用したリサイクル炭素による新規熱可塑性コアを据えるなど、ケータハムのオールドスタイルを作っていた社長とは思えない進化っぷり(笑)。
もっとも、これらの新技術はショーケースとして選ばれたわけではなく、比較的低コストで長く、そしてメンテナンスの平易さを担保するためとしています。だいたい、フォードの汎用エンジンを選んでいる時点で良心的。独自のチューンを施しているとのことですが、いざ故障したってときでもパーツは簡単に、しかもお安く手に入りそうですからね。
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架装されるボディもまた、見るからに低く、軽そうなもので、ロードスターのユーザーが羨ましがるようなデザイン。ツートーンのボディカラーはゼノスのアイデンティティであり、シート後ろにそびえるシングルケージとそれにフィットするディフレクターなど、どれをとっても「スポーツカー然」としたスタイルです。デザイナーの名は公表されていませんが、どこかのカロッツェリア製といわれても納得できる出来ばえではないでしょうか。
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そんなゼノスE10/E10Sは2015年から発売され、足まわりがサーキット向けにカスタムされるなどのチューンアップされたE10Rが2016年から発売されています。うれしいのは、ゼノスは日本国内にも正規ディストリビューターが存在していることかと。ケータハムといい、ゼノスといい、主治医選びは大切にしたいもの。
ちなみに、ゼノスは2017年にACカーズ(いわずと知れたACコブラを作ったイギリスのメーカー)傘下に入った模様。これまで100台以上のE10シリーズが販売されており、それらのアフターサービスもACが担ってくれるとのことで、こういうところもイギリスらしいといえば、らしいメリットかもしれません。
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が、肝心のアリ社長はすでにゼノスを去り、マクラーレンのSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーション)で辣腕を振るっているとか。となると、ゼノスE10のような高性能だけど庶民的なスポーツカーはちょっと期待薄。ここは、ゼノスのあとを追うようなニューマシンの登場に期待すべきでしょう。ご承知のとおり、イギリスにはそういう情熱的なメーカーやエンジニアはごまんといますからね。