この記事をまとめると
■1980年代後半から1990年代前半にかけて4ドアハードトップが流行った
■ホンダのアコードインスパイアとビガーは縦置きFFレイアウトを取り入れた
■独自の設計でバランスに優れておりユニークな構造となっていた
直列5気筒エンジンを縦置きしたFFマシン
1980年代後半から1990年代前半にかけて、日本国内市場で人気を集めたのが4ドアハードトップというボディ形状だ。フロント/センター/リヤと3本のピラーが存在するオーソドックスな4ドアセダンに対し、車体中央のピラーを無くしてスタイリッシュなフォルムを目指したのが4ドアハードトップである。
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ハードトップの特徴は、実用性が重視される4ドアでありながらスポーティなフォルムを優先させたこと。カンタンにいうと、実直なセダンに対してやや「遊び人」風な印象を漂わせる4ドアモデルがハードトップだ。スタイリングを優先させているためルーフは前後に短く、ルーフ高も低い(ほうがカッコよく見える)から、当然ながらセダンに比べて車内は狭い。さらに、フロントピラーの角度が寝ているから、運転席からの見切りもよくない。でもそれはしょうがない。だってカッコよさを重視しているのだから。
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一方で、インテリアはシート表皮に手触りのいい素材を使用していたり、座り心地のよさや快適装備の充実など、上質さを追求していた。車内の広さはセダンに比べてやや狭い、というのがハードトップの標準であったけれど、むしろそれくらいのほうが乗員同士の距離感も縮めてくれてよかったのかもしれない(!?)。
そんな4ドアハードトップ市場にホンダが送り込んだのが、1989年9月に発売された「アコードインスパイア/ビガー」である。アコードという車名こそ付いているが、車体やエンジンはまったくの別物。ボディは車体中央のBピラーが車両側に隠れるように設計されるピラードハードトップとされ、さらにオーソドックスなFFセダンのアコードに対し、アコードインスパイア/ビガーは「FFミッドシップ」という言葉を掲げ、直列5気筒エンジンをタテ置きに搭載していた。
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車体の前方にエンジンを搭載し、フロントタイヤに駆動力を伝えるのが「FF」であり、「ミッドシップ」とはエンジンを車体中央に搭載するレイアウトのこと。つまり、両方が並んで表記されることは普通ありえないが、ホンダが掲げた「FFミッドシップ」とは、エンジンを車体前方に搭載しつつ、その場所を前輪よりもなるべく車体中央側に寄せるというものだった。
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