変速比を見てわかることとは
■AT全盛のこのご時世に「変速比」の掲載は必要か?
このように、MTの比率が高かった時代は「変速比」を気にしている人も一定数いたことと思いますが、新車登録台数でMTの比率が1〜2%前後となってしまったいま、その数値を掲載する意味に疑問を感じてしまいます。
その疑問を、自動車メーカーのなかでもトランスミッションへのこだわりが深いと評判の「スバル」にぶつけてみました。みなさんご存じのように、スバル車はかつてのWRCでの活躍が印象に残っているように、スポーツ性能の高さや悪路&雪道の走破性の高さに優れると高い評価を受けています。
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返答としては、「スバル車を求めるユーザーはドライビングに対する意識が高い人が多く、運転技術の向上や、愛車をうまく使いこなすことに情熱を傾ける、いわゆるマニアックな人に支えられているという傾向があるため、『変速比』というクルマを操るために重要なデータの提供は必要です」とありました。
マニア度が高い人なら、その変速比の構成を見るだけで、「今回のニューモデルはギヤ同士がそれほどクロスしていないから、トルク特性が広くなっているかもしれないな……」なんていう想像を楽しめたりするわけです。
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では、一般的なトルコン式のATや、スバルが得意としているCVTなどの自動変速タイプのトランスミッションで「変速比」の掲載は必要でしょうか?
とくにCVTは無段変速機構のためギヤというものがなく、段ごとの「変速比」を掲載する意味がないように感じます。
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これについては、“マニュアルモード付き”とそうでない標準タイプで異なるそうです。
標準タイプでは、速度やエンジンの回転数などに応じてECUが適切なギヤ比を無段階のなかから選び出してくれる仕組みのため、実際には段自体がありません。そのため、諸元上では「3.327~0.628」のように、変速比の範囲だけが掲載されています。
一方で、マニュアルモード付きの場合は、標準タイプと同じ範囲表記に添えて、1〜8速など設定された段数ごとの変速比(※代表的な数値)が表記されています。
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これはMTの場合と同様に、その変速比の設定を見て「段を上げていくごとに高回転を楽しむような設定になっているのか」というように、設計の意図を汲み取って「ニヤリ」とできる材料という意味もあるとのこと。
ちなみに「※代表的な数値」というのは、あくまでも“基本設定値”ということで、エンジンや車両の状況に応じて細かく調整が入るようです。
このように、スバルではユーザーの求めに応じる形で今後も、「変速比」の掲載は残していくようですが、業界全体では、メーカーごとの考え方の違いで、今後は掲載されなくなっていくのかもしれません。