クルマの大型化のため4WSがふたたび日の目を見ている
近年、ふたたび4WSをさまざまなメーカーが採用するようになってきた。その印象を大雑把にいうと、1980年代の4WSに見られた違和感はほぼ完全に解消されている。4WSを採用する狙いも、クルマの安定性の向上だけでなく、最小回転半径のコンパクト化が狙いになっているように思う。
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クルマの大柄化に伴って、ホイールベースも拡大し、最近では3mを超えるクルマも珍しくない。その結果、最小回転半径も大きくなっているのがその背景にある。また、シャシーまわりの剛性が上がり、後輪操舵の制御精度が高くなったことも要因になっているのだろう。
最新の4WS装着車……たとえばクラウンエステートを例に挙げると、全長は4930mm、ホイールベースは2850mm。最小回転半径は5.5m。街なかを走らせた印象は、ボディサイズの割に取りまわしがよく、クルマの大きさをあまり意識させない。とくに狭い路地で大きくハンドルを切るような場面では、全長が5m近くあるとは思えないもの。カーブのきつい山道でも、ボディサイズがひとまわり小さくなったと思えるほど自在に走らせることができた。
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その際、クルマがカーブの内側に寄りたがるような、かつての悪癖はきれいになくなっており、感心するほどナチュラルなドライブ感覚だった。
一方、激しい雨のなかで高速道路を走らせてみると、とくに300Rくらいの高速道路としては比較的きつめのカーブで、ホイールベースが長くなったかのような安定性と、リヤまわりのドシッとした安心(安定)感がある。
後輪操舵を採用することで、取りまわしのよさと安定性を両立させることができるようになっている。
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基本的にタイヤがグリップの範囲にある場面では、クセや違和感はすべてといっても過言ではないほど解消している。何の構えもなく普通に運転できる。そもそも4WSの存在さえ気にならないほど自然なドライブ感覚に仕上げられている。
あえて言えば、後輪駆動でかつESC(横滑り防止装置)をオフにして、後輪をスライドさせる場面、とくにそれが逆位相から同位相に切り替わる速域にあると、必ずしもリニアではない動きを見せることがある。