最初のポルシェ「356」はRRかと思いきやミッドシップ!? MRの実車が作られるもなぜRRで市販されたのか? (2/2ページ)

ミッドシップがダメだったと判断するやすぐにRRで356をリリース

 ちなみに、記念すべき最初のポルシェ車、ミッドシップ356をポルシェ博士はいとも簡単に売り払ってしまいました。なにしろ、創業当初で資金繰りもままならない状況だったようで、これはこれで致し方ないところかと。それでも、グミュントから現在のシュツットガルトに移動した1950年にはさすがに買い戻しています。もっとも、ポルシェ博物館に飾られているのは精巧なレプリカとされ、本物はどうやら倉庫の奥深くにしまわれているとか。

 さて、不評だったミッドシップ356に替えて、すぐさまRRの356が発売されたのはご存じのとおり。ミッドシップからの転進があまりに早いことから「ミッドシップは発売前の宣伝材料で、最初からRRが本命だったのでは?」と見る向きもありますが、ポルシェ博士は雑誌のインタビューでこう答えています。

「エンジンがオーバーハング(RR)していようと、車室内に割り込んでいようと(MR)私にとっては大きな問題ではなかった」

 つまり、ポルシェ博士の基本コンセプト「小さなクルマに十分なパワーさえあれば、オーバーパワーで大きなクルマよりずっと楽しい」を優先するのにエンジンの置き場はさほど関係なかったということかもしれません。

 ともあれ、ポルシェ博士はVWからの潤沢な資金援助を得て、356の改良や増産体制を構築し、また海外への輸出も確立した結果、会社は大成功を収めることに。と、同時に356への評価も確立し、15年もの長きにわたって生産し続けられたのでした。

 歴史に「もし」はご法度ですが、もし356がミッドシップとして発売されていたとしたら? ポルシェ好きなら、そんな夢想で夜を明かしてしまいそうです。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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