この記事をまとめると
■トヨタのSUVは全体として好調だが過去には例外的に不振な車種もあった
■クルーガーVや2代目RAV4は兄弟車や拡幅が影響し低迷
■北米志向が露骨だったヴォルツは日本市場に馴染まず
王者トヨタといえども失敗あり
2024年度(2024年4月から2025年3月)の国内販売状況を見ると、トヨタ車の割合は33%だ。ただし、小型/普通車に限ると、トヨタの販売比率は50%に増える。2024年度には、トヨタがほとんど扱わない軽自動車の販売比率が36%だったから、トヨタの販売比率は軽自動車を除くと急増するのだ。
そしていまはSUVの人気が高く、小型/普通車販売ランキングの上位にも、トヨタのSUVが多く並ぶ。国内におけるSUV販売では、トヨタのヤリスクロス、ライズ、カローラクロスがトップ3だ。
しかし、トヨタのSUVがすべて好調に売れてきたわけではない。過去には売れゆきが伸び悩んだ車種もある。そのような例外を見ていきたい。
■クルーガーV(2000年登場)
ハリアーと共通点の多い実用的なSUVで、ホイールベースは2715mmと長い。クルーガーVの発売時点ではハリアーは初代が売られており、ホイールベースは2615mmだった。そのためにクルーガーVは車内の広さで注目された。
トヨタ・クルーガーのフロントスタイリング画像はこちら
しかしハリアーが2003年に2代目になると、ホイールベースをクルーガーVと同じ2715mmに拡大して室内を広げ、クルーガーVは目立たない存在になり、売れ行きを下げた。モデル末期の2005年の1カ月平均登録台数は922台で、2006年はわずか581台。価格はハリアーよりも安かったが、買い得と呼べるほどの差はなく、人気の低迷に結びついた。
■2代目RAV4(2000年登場)
初代RAV4はコンパクトな5ナンバー車で、最初は3ドアボディで発売された。その後に5ドアを追加して、ファミリーユーザーの人気も高まり、売れ行きをさらに増やした。
しかし2代目では、全長は短いものの全幅が1700mmを超えて3ナンバー車になった。初代に比べて魅力が下がり、売れ行きも低下した。2001年はフルモデルチェンジの直後でもっとも多く売られる時期だが、1カ月平均の登録台数は約2100台に留まった。
2代目トヨタRAV4のフロントスタイリング画像はこちら
2003年には1カ月平均登録台数が約1000台に下がり、RAV4の人気と知名度も低下していった。3代目も売れず、RAV4は一時的に国内市場から消滅した。
■ヴォルツ(2002年登場)
トヨタの生産総数に占める国内と海外の販売比率は、1991年は各50%であった。その後は海外指向を強め、国内は下がっていく。2002年には国内が30%で海外は70%まで増えた。
ヴォルツはトヨタの海外販売比率が急速に高まった2002年に登場した。GMとの提携により、北米工場(NUMMI)で生産され、国内へ輸入して販売された。5ドアハッチバックとSUVの中間的な車種で、プラットフォームはカローラなどと共通。発売時点では2種類の1.8リッターエンジンを用意した。
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外観は北米指向の強い大胆なデザインだから、日本のユーザーが好む繊細さに欠けた。全幅は1775mmの3ナンバー車だ。これらのマイナス要素が災いして、2003年は発売の翌年なのに、1カ月平均登録台数は370台と低迷した。
トヨタはいうまでもなく優れたクルマづくりをするメーカーだが、海外向けの商品を国内へ投入するとサッパリ売れない。トヨタに限らず、近年の日本車の売れ行きが下がった背景には、日本のメーカーが日本のユーザーから離れた事情がある。日本のユーザーを軽く考えたことによる当然の結果であった。