レジェンドふたりも総合力の高さに舌を巻く
コンパウンドは、シリカとカーボンブラックの粒子を従来より小径化。カーボンブラックは量を増加した上、新たなポリマーやシランカップリング剤の採用でシリカをバランスよく分散させ、ドライでもウエットでも高い性能を目指した。また、タイヤ形状をよりスクエアにすることで接地面積を拡大。グリップを高めるだけでなく、低荷重時と高荷重時の変化を抑制、すなわち荷重依存性を低減している。
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「なめらかだね。切っていくときの動きがすごく自然。直進からの切りはじめの動きがクイックなのがスポーツタイヤ、って思ってる人も多いけど、本当に大事なのはいかに操作に忠実な動きをするか。ステアリングレスポンスがクイックすぎるのも困る。その点、V107は切った分に忠実な動きをしてくれる」という桂さん。
中谷さんも「クイックさがタイヤの凄さだって勘違いされがちだけど、そこをあえてマイルドにしてる。これでサーキットは大丈夫? って思わせるけど、実際に走ってみるとまったく問題ないしね」との評価だ。
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タイヤの性能向上には、内部構造も大きく作用する。土台となるカーカスに採用されるマトリックス・ボディ・プライは、サイドからショルダーまでを交差する二重構造とし、周方向の剛性を向上しステアリングの精度を高める。そのプライが高速時にせり上がるのを防ぐスチールベルトも高剛性化。また、一部サイズには、一般市販用では横浜ゴムでは初となるアラミド繊維のパワークラウンベルトや、欧州車の純正タイヤに求められるハイスペックのレーヨン・ボディ・プライも導入。過剰な変形を抑えることで、より高い速度域を想定した操縦安定性を実現する。
「クイっとか、グニャっとか、イヤな感触がまったくないね。高速での、遠心力による変形の悪影響も感じられない。最近は500馬力を超えるSUVも増えて、ほんのちょっとした瞬間にタイヤが空転したり滑ったりすると、日本の道は狭いままなのにクルマは大きくなってるから、危ないよね。そうなってくると、正確なライントレース性は重要だよ」と中谷さん。
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「といって、乗り心地は硬くなってない。必ずしも低扁平でガチガチなのがスポーツタイヤではないよ。少なくとも、SUVに合うスポーツタイヤはそういうものではない。その点、V107は変形を抑えながらもしなやかでSUVとの相性もいいね。しかも欧州のスピードレンジを見据えて開発してるから、それより速度域の低い日本では、長いライフも期待できそう」。
ドライブしながらタイヤ談義を交わした中谷さんと桂さん。話題はいつしか、かつてADVANで走ったレースへと移っていった。
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「40年くらい前のグループAのスタリオンからGTO、ランエボと、ADVANで走った時期は長かったな。GTOは、タイヤに厳しいクルマだったけど」という中谷さん。
桂さんは「GTOはウエットで速かったよね。ボクもランエボで履いたけど、熱ダレが少なかったな」と、当時を振り返る。
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そしてふたりとも、タイヤ開発においてレースが果たす役割は大きいと語る。「市販車には直接つながってないように思われるかもしれないけどね」と桂さん。中谷さんは「実際はそのころの技術開発の成果も、市販タイヤに凝縮されて生きているんだよ。そう思うと、ドライバーとしてもうれしいね」という。
峠道から高速道路、市街地と、さまざまなシチュエーションでV107の走りを味わったふたり。桂さんは、その総合性能を実感したという。
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「スポーツ性能と快適性能が、高い次元でバランスしてる。ノイズもハーシュも少ないし、横Gを受けても意識させない。凹凸を乗り越えるときの音も少ないし、ショックもまろやか。公道では文句ないし、テストコースやサーキットの高い速度域で、限界性能も試してみたい気にもさせるね」
スポーツタイヤのカテゴリーに属するV107と、SUVとの相性のよさを評価した中谷さんは、タイヤとクルマのマッチングの重要性を再確認したようだ。
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「普段はけっこう大きな入力を感じる波状路や高速道路のジョイントなんかでも、乗り心地がよかったね。荷重もトルクも大きいクルマでも性能が確保できているから、EVにも合いそう。いいクルマを生かすのはいいタイヤだけど、いいタイヤはいいクルマに履かせてこそ真価が発揮されるんだな、ってよくわかったよ」。
ハイパフォーマンスを誇るオンロードSUVが登場して久しいが、フィットするタイヤがなかなか見つからないオーナーは少なくないのではないだろうか。SUVを想定したサイズやトレッドパターンも取り揃えるADVAN Sport V107は、そんな悩みを解決してくれるはずだ。
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