【試乗】釧路のレイバックCM撮影地をなぜかレヴォーグで訪問! 霧で絶景にはフラれるもレヴォーグの走りは頼もしすぎた (2/2ページ)

運転の過程を楽しめるスバルのGT性能

 でも、そんな条件下でレヴォーグSTIスポーツR-ブラックリミテッドを走らせたからこそ、色々と気づくことがあった。まずシメトリカル4WDならではの、左右対称にして前後もほぼ60 :40という重量配分のよさ。静的なバランスよさだけでなく、駆動配分もこれに準じるため、素直で無理のない挙動というか、動的な質の高さが一貫して腰や手もとに伝わって来る。当然それはロングドライブに心地よく、ドライバーにも乗員にも安心感をもたらす。

レヴォーグをドライブする南陽一浩さん

 ボクサー4気筒の1.8リッターターボは、300Nmとトルクは十分だが最高出力は177馬力でけっこう控え目。だがスムースさは並の4発より抜きん出ているし、リニアトロニックCVTと相まってダイレクトな加速、息つぎのない駆動レスポンスを味あわせてくれる。

レヴォーグの1.8Lターボエンジン

 いわばレヴォーグは、アウトバーンをドーンと飛ばして目的地にさっさと着くことに重きがあるドイツ車ライクなグランドツアラーではなく、移動すること自体、走らせるプロセスそのものをドライバーが噛みしめられるタイプのそれ、だ。だから目的地での目的が悪天候でポシャっても、無駄足だったとかいう後悔の念や徒労感より、むしろ残念だったけどまた来たい、そんな気にさせてくれるポジティブな乗り味が際立つ。

霧の中を走行するレヴォーグ

 それを支えるのが、スバルが0次安全と呼ぶところの見切りのいい視界や、扱いやすい車幅のボディ。加えて馴染みがよく正確なステアリングフィールや、制動キャパが大きいだけでなくしっとりと御しやすいブレーキタッチに表れているような、アクティブセーフティ面の確かさだ。

 何よりレカロのシートは座り心地や横方向のサポートもさることながら、骨盤を立てて座りやすいので疲れづらく、シャシーや駆動のフィールもキチンと伝わってくる。アイサイトなど予防安全にまつわる機能も確かに充実していて、前走車がいる局面での追走やレーンキープぶりも申し分ないが、それ以前の基本部分がとにかく盤石なのだ。

レヴォーグのレカロシート

 加えてSTIスポーツにはZF製の可変減衰力ダンパーが備わり、ステアリングホイール右下あたりの物理的スイッチで、シャシー設定をサクサク切り替えられる。道や気分、走るペースに応じて、コンフォート/ノーマル/スポーツ/スポーツ+の4段階、プラス個別設定という5種類の走行プログラムを使いわけられるのだ。

レヴォーグのドライブモードセレクト画面

 コンフォートでは揺れが収束するまでにバウンスするほど柔らかいが、スポーツ+でもガチガチに締め上げるでなく、しなやかにボディの姿勢をコントロールする方向性が一貫していて、制振性の素早さが増していく感覚だ。逆に、パッチ路面や継ぎ目で足の吸い込みが少し神経質に感じることはある。また鈍くはないがステアリング中立近くの遊び幅と直進時の微調整、転舵時にゲインが利くまでのひと呼吸には、慣れる必要も感じた。とはいえワインディングでの4輪の接地感、スタビリティと軽快さを両立させた走りは、1.8リッターのSTIスポーツならではと唸らされる。

コーナーを走行するレヴォーグ

 惜しむらくは、ボクサー1.8リッターターボはスムースだが官能的ではないところがひとつ。ふたつ目は内装、とくにインターフェイス上のデザインで、ひとつひとつは読み取りやすいが、ゴシック体フォントの表示が全体として説明書っぽく煩雑に見えるところ。人によりけりだが、たとえばUSB-Cの接続口に「3.0A」、同Aのそれに「2.4A」といったアンペア表示は、省いても困らなさそうなものと映る。

レヴォーグのUSBソケット

 3つ目は外装、塗装面の平滑性が低いこと。もっと周囲の景色がボディに美しく映り込んでくれたら、グランドツアラーとして完成度、オーナーの満足度はさらに高まるはずだ。外面的なことより、リヤハッチに電動開閉を備えているとか、雪道やラリーでガシガシ走らせるからこそ塗装表面より防錆コートの方が大事というのが、従来的スバルらしさかもしれない。が、円安で輸入車難民が増えている今だからこそ、惜しい部分なのだ。

コーナーに差しかかるレヴォーグ

 とはいえ北海道を走っていると、スバル車とすれ違う頻度はほかのどの土地より多く感じる。独自AWDの走りによる安心感と信頼性が、根を張っている様子は存分に伝わってきた。それこそが絶景ロングツーリングへの背中を押す、欠くことのできない何かなのだ。

レヴォーグの主要諸元表


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南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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ランニング
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