1930年代の名車クライスラー・エアフローがモチーフ
また、印象のもととなったスタイリングは、ニュービートル同様にクライスラーのヘリテージモデルともいえる「エアフロー」をベースにしたとされています。
1930年代、各メーカーに先がけてクライスラーが初めて風洞実験を基に作り上げたのがエアフロー。独立したヘッドライトや角ばったボディラインが主流だった当時、ボディにヘッドライトを埋め込み、角という角を丸めたスタイリングは、クライスラーとしても大冒険といわざるを得ないものでした。
クライスラー・エアフローセダンのフロントスタイリング画像はこちら
が、同クラスの最高速が100km/h程度だったのに対し、エアフローは160km/hオーバーを達成し、ユーザーはもとより他社のエンジニアたちを驚かせたのでした。もっとも、販売成績そのものはあまりパッとしなかったようで、クライスラー首脳陣は「時代を先取りし過ぎた」と振り返っています。
それでも、数十年の時を経てエアフローのモチーフはリベンジ、すなわちPTクルーザーの売り上げに貢献できたのではないでしょうか。前述の通りバリエーションが充実していただけでなく、2004年には2ドアのコンバーチブルまでラインアップして、商品価値の底上げまで行われました。
クライスラーPTクルーザー・コンバーチブルのフロントスタイリング画像はこちら
結局、2010年の生産終了時までに135万台を生産するというスマッシュヒットとなり、100万台オーバーといわれるニュービートルとなかなかのタイマッチを繰り広げたのでした。
ちなみに、舞浜でディズニーリゾートを訪れた客を相手にPTクルーザーがタクシーとして使用されていたこともあります。特徴的なスタイリングに加え、4ドアのユーティリティがものをいったのでしょう。ニュービートルには真似のできない活躍だったこともPTクルーザーの思い出として記憶しておくべきではないでしょうか。