どんなに速くても抜くことがほぼ不可能なF1モナコGP! ずっと同じ隊列で70周以上を走り続けるレースに意味はあるのか? (2/2ページ)

モナコの1勝はどのコースよりも価値がある

 筆者は大いにあると思っている。

 第一に、ドライバー自身がモナコで優勝することをすごく名誉なことだと思っているし、「モナコでの1勝は他での3勝に値する」といわれるほど、モナコウィナーは格別の評価を受ける。ファンとしても、一度は観戦してみたいコースとしてモナコを挙げる人は多いし、オーバーテイクだけがF1の魅力でもない。

 F1は世界各地を転戦し、イタリアのモンツァのように最高速度が360km/hオーバー、平均速度でも240km/h以上、全開率77%のコースもあれば、モナコのように最高速度290km/h、平均速度150km/h、全開率43%のコースまで、同じマシン、同じギヤ比で走るから面白い。

 また、タイトでテクニカルなコースだからこそ、わずかなミスでウォールの餌食となり、あのレジェンドチャンピオン、アイルトン・セナやミハエル・シューマッハですら、コースの餌食となってチェッカーを受けられなかったレースがあるほどだ。また、このモナコでセナと好バトルを演じたナイジェル・マンセルは、あれだけ速かったのにモナコでは未勝利で終わっている。

 そういう意味で、モナコは誰もが認めるドライバーズ・サーキットである。

 卓越した技量に加え、勇気と闘志といった熱的な精神力と、戦略、判断、洞察力、集中力といった鋭力と呼ばれるメンタル、さらにはどんなプレッシャーにも動じない確固不抜の平常心の3つの精神力がハイレベルで確立していないと勝てない環境なのだ。そうしたドライバーたちの精神状態を推測するだけでも、十分グランプリを楽しめるはずだ。

 オーバーテイクができないことから、毎年のようにコース改修に関する意見が聞かれるモナコだが、抜けないからこそモナコの予選は白熱するし、どのサーキットよりも勝ちたいからこそドライバーたちは「抜きたい」という気もちがヒートアップしていく。年間24戦もあるF1カレンダーのなかに、モナコのようなコースがひとつぐらいはあるべきだとポジティブにとらえてみてはどうだろうか。

 ちなみに2025年のモナコウィナー、ランド・ノリスは、「勝つべきレースをした人が勝てばいいんだと思う」「なぜ皆がそんなに(オーバーテイクを)期待してるのかわからない。これはエンタメじゃなくて、スポーツだよ」とコメントしている。

 勝てたときはどのサーキットよりも嬉しく、2位以下だとどこよりも悔しく、コースレイアウトに不満が募るのがモナコであって、そうした特性と条件をすべてひっくるめて、モナコグランプリを楽しめばいいと思う。

 第一、あの狭いコースを、あの速度でF1マシンが78周も走り続けるシーンは圧巻で、もっともF1ドライバーたちの超人性がわかりやすいシチュエーションでもある。一般人にF1マシンの迫力、F1ドライバーの非凡さを知ってもらうためにも、モナコはこれからもF1グランプリに欠かせない一戦といっていいだろう。


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藤田竜太 FUJITA RYUTA

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