熟成度が高まりさらに走りが洗練された
実際に走り出してみると、まぁ+3馬力の効果は僕にはまったく体感できなかったのだけど、少し前のタイミングでキャプチャーにもアルカナにも試乗してたこともあって、やっぱりルーテシアはキビキビしてて楽しいな、という気もちが沸々と湧き出してきた。このパワートレインは、低速域から高速域まで常にレスポンスのよさを発揮してくれて、車体の大きなアルカナでさえ爽快感が感じられる走りを披露してくれる。それより170kgも軽いのだから、その加速の快さはとっぷりと語るまでもないだろう。
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アクセルペダルを深く踏み込んで走るときのテイストは、爽快というよりもはや痛快。力強さ、伸び感、そして実際に得られるスピードのすべてが不満のないレベルにある。
実際にアルピーヌのエンジニアたちが開発に絡んでいるかどうかはわからないけど、ルノーは世界でいちばんホットハッチ作りに長けたブランドであり、ベーシックなグレードですらフットワークのよさについては定評があるわけで、この“ホット”とまではいかない“セミホット”くらいのルーテシアも、やはりシャシーのキレは嬉しくなるくらいに良好だ。飛び道具のような機構は何ひとつもたないのに、ハンドリング、コーナリングパフォーマンスともにドライバーがうれしくなるくらいに気もちいい。このパワートレインとシャシーの組み合わせは、たっぷりとスポーティなのだ。
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ここまでスポーティなテイストを感じさせてくれるなら、変速をクルマ任せにするほうが効率はいいのかも知れないけれど、思わず「あぁ、シフトパドルが欲しい……」なんてないものねだりをしてしまいそうな気分にすらなる。
そうした性格を秘めてるのに、街なかなどではほとんどの場面をモーターだけでこなし、高速巡航では頻繁にコースティングを繰り返し、と基本的には地球──と財布──に優しい性格である。走行環境が悪くなければ、誰もが発表値の25.4km/Lに近い燃費をマークすることができるだろう。
今回は少し走っては撮影、また少し走っては撮影、つまりはチョイ乗りを延々繰り返したみたいな走らせ方になっちゃったから発表値には近づけられなかったけれど、それでも20km/Lは越えた。過去にアルカナで27km/L台、28km/L台などをマークしたことがあるから、軽くてコンパクトなルーテシアで注意深く走れば、その数値を超えていけるだろうことは簡単に予想がつく。
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そして、まったくアナウンスもされてないことなのだけど、若干ながら乗り心地がよくなってるように感じられたことにも触れておくべきだろう。ルーテシアはもともと、それなりに足が引き締められてはいるものの、乗り心地は良好といえる範疇にあったのだけど、そこからさらに快適さを増してる印象なのだ。
どこにどう手を入れたとか、そういう文言は資料のどこを探しても出てこない。おそらく熟成が進んだ結果、ということなのだろう。フランスはワインにしてもチーズにしても、熟成させるのが抜群に上手いお国柄。絶え間なく小さな改良を繰り返して来てるのだろう。ヨーロッパの──とくにフランスの──クルマはモデル末期が美味しいといわれることが多い。このルーテシアも、見事にそこにあてはまる。
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6代目ルーテシアが日本に来るまでにはまだまだ時間がかかるだろうけど、僕はあえてそれを待つ必要もないんじゃないか? と思う。心からそう感じられた。モデル末期の第5世代、かなり魅力的に仕上がってると思うのだ。
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