【試乗】ナリはバスでも走りはポルシェを連想させる! ID.Buzzがあれば楽しいカーライフが送れること間違いなし!! (2/2ページ)

姿に似合わぬ素直なハンドリングと豪快な加速に目を見張る

 今回、試乗したのはLWBだったが、走りはさすがVW、小気味よく痛快だ。最大トルク560Nmに最高出力286馬力(210kW)というスペックは、2730kg(パノラマガラスル―フ装着仕様)の車重の前には控えめに見えたが、RRレイアウトでアクセルを開けてから後輪で蹴る感覚、荷重のかかり方から加速まで、効率がいいのだ。

 さらに、ブレーキ制動時の姿勢も、後輪側で回生してくれるのでノーズダイブせず、グッと軽く沈み込むような感触が、サイズ感がまるで違うポルシェのよう。いわばタイプ2と4発時代のポルシェのような、メカニズム的に遠縁の親近感も、ID.Buzzには感じられる。

 RRであることは述べたが、LWB仕様のタイヤはフロントが235/50R20に対し、リヤは265/45R20という前後輪で異なるサイズを履いている。

 このボクシーなシルエットにもかかわらずボデイも空力的で、Cd値はわずか0.285と乗用車並に収まる。アクセルペダルをオフにした際の、滑っていくようなモーターの切り離しっぷりもさることながら、素直なハンドリングとダイレクトで豪快な加速にも、目を見張らされる。

 フロア下、2列目より前に収められた91kWhのリチウムイオンバッテリーは、構造体としてボディ剛性や低重心化にも寄与しているようだ。大開口部をもつスライドドア仕様というのに、ミシリとも聞こえてこないほどボディ剛性は高いし、キビキビと走らせることもできれば、海岸沿いの道をひたすらチルにゆっくり、流すのも心地よい。

 しかも3列目シートは、ヘッドスペースをかなり攻めているとはいえ、身長175cmの大人がキチンと座れる。もちろんテールゲートも2列目のスライドドアも電動パワー開閉仕様だ。LWB仕様ならラゲッジ容量は2469リットルもあって、限りなくフラットにもなる。停車時にBEVだからアイドリング条例に引っかかることもないので、ID. Buzzなら車中泊してみたいとすら思う。

 航続距離は最大554kmとなっており、全国380カ所のPCA(プレミアム・チャージング・アライアンス)拠点で、最大140~150kWの流量で急速充電できるという。

 12.9インチのタッチスクリーンによるインフォテイメントは、VW乗用車のそれと同様、「Ready 2 Discover」で、以前の世代に比べたらずいぶんと扱い易くなった。

 収納スペースはポケットだけでなく、トレイやチルトの引き出しが多々あるが、VWトランスポーター系の伝統で、ドリンクホルダーの間仕切りのひとつが、栓抜きになっている。森の奥深くか美しい湖の畔か知らないが、いざ素敵なキャンプの現場にもち込んだビールの栓が開けられない……というジレンマは、ドイツ人には永遠に許しがたいものらしいのだ。

 数少ない欠点は、回生ブレーキを手もとで積極的に発動させたいとき。右手をステアリングから離して、ステアリング向こうのシフトスイッチをD>Bにまわして切り替える必要があること。もしパドルがあって数段階の回生が切り替えられたら、より走りが楽しいだろうとは感じた。

 もうひとつは、V2LやV2Hといった給電・蓄電関連の機能は当面なく、備わるのはDC12VとUSB-Cのみであること。BEVはもはやクリーンに移動するのみならず、そこで時間を過ごすための空間でもあり、乗っていない間もエネルギー・ストックとして人の暮らしが拠るところでもある。カリフォルニアだけでなく日本でもテスラのパワーウォールが街の電気チェーン店で売られている時代だからこそ、ノスタルジーと同時に何らかの提案を示してほしい部分でもあるのだ。


この記事の画像ギャラリー

南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

-

愛車
アウディA6(C5世代)
趣味
ランニング
好きな有名人
コロッケ、サンシャイン池崎

新着情報