速さの所以は開発競争にアリ
もはや、現在の四輪レースシーンにおいて、スーパーGTのGT500より速いマシンは、世界最高峰カテゴリーのF1とアジア最速のスーパーフォーミュラしかない状態なのだが、このGT500クラスのスピードを生み出しているのが、スーパーGT独自のレギュレーションの存在だ。
GT500クラスには、トヨタ、ホンダ、日産の3メーカーが参戦しており、2025年のシーズンはトヨタがGRスープラGT500、ホンダがシビック・タイプR-GT(2026年よりプレリュードGTに変更)、日産がZ NISMO GT500を投入。開発コストの高騰を抑制すべく、東レのカーボン製モノコックを筆頭にZF製のトランスミッション、BOSCH製のECUなど共通部品も多く、さらに空力デバイスにおいても、リヤウイングが共通されるほか、フロントスポイラーやアンダーフロア、リヤディフューザーなどの形状も指定されている。
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それでもGT500クラスの車両はほかのカテゴリーの車両と比べると開発の自由度は高く、各メーカーは年次改良でアップデートを実施。プロトタイプのレーシングカーのようにスケーリングを含めて、ベース車両を凌駕する開発が行えることもGT500クラスの特徴だ。
気になるエンジン形式は意外と普通で、2リッター直4の直噴シングルターボエンジン採用する。なお、このエンジンはスーパーフォーミュラと共通する、「NRE(ニッポン・レース・エンジン)」という規格に準拠しており、各メーカーが規定のスペックのなかで競技専用エンジンを開発していることも、GT500車両が高いハイパフォーマンスを生み出している理由のひとつだ。
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これに加えて、国内外のほかのカゴリーではタイヤのワンメイク供給が主流となるなか、スーパーGTではタイヤのマルチメイクが行われており、GT500クラスにはブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップの3メーカーが参入し、激しい開発競争を展開。
この結果、スーパーGTのGT500クラスは、前述のとおりF1やスーパーフォーミュラに次ぐスピードを誇り、実質的にも世界最速のツーリングカーとなっているのである。
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ちなみにGT500クラスと混走で争われているGT300クラスは車種ラインアップが豊富となっていることから、“世界一の激戦クラス”と呼ばれている。それを生み出している要因が、GT300クラス独自のレギュレーションの存在だ。
GT300クラスではベース車両の車室部分を残せば、前後のパイプフレーム構造への変更や外装部品の変更が行えるほか、ベース車両と同じメーカーのエンジンなら自由に変更できるGT300のほか、専用のカーボンモノコックとGTAが供給する4.5リッターV8エンジンを採用したGT300MC、そして世界でも使われるFIA公認のGT3車両といったように、3つの車両規定を採用している。
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これにより、レクサス LC500/LC500hやトヨタ GRスープラ、スバル BRZ GT300、日産 フェアレディZ、トヨタ GR86といったGT300車両に加えて、トヨタ 86MCに代表されるGT300MCなど日本独自のモデルがエントリー。
さらに、メルセデス AMG GT3やフェラーリ 296 GT3、アストンマーティン・ヴァンテージGT3 EVO、ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO、ポルシェ 911GT3R、日産 GT-RニスモGT3、レクサス RC F GT3といったように、国内外のさまざまなGT3モデルも参戦していることから、GT300クラスは多彩な車種バリエーションを実現している。
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これと同時にGT300クラスでは車両の最低重量、最低地上高、吸気リストリクター、ターボの過給圧など車両間の性能調整が行われるほか、GT500クラスと同様に、リザルトに応じてサクセスウエイトを加算。タイヤもブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランといったように4メーカーが開発競争を行っていることも、“世界一の激戦クラス”と呼ばれる理由のひとつだ。
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2026年のスーパーGTでは、ホンダがシビック・タイプR-GTに代わってプレリュードGTをGT500クラスに投入するなど、ニューマシンが登場する。マシンの完成度によっては勢力争いが一気に変わる可能性があるだけに、2026年もスーパーGTに注目したいものだ。