ぶっちゃけ値段の差もほぼないし燃費もATのほうがいい! それでも「好きだから」以外にMTを選ぶメリットがあるのか考えてみた

この記事をまとめると

■MT免許は講習分離へ移行したが取得者はなお3割以上を占める

■MTとATが両方設定されるモデルの車両価格や燃費性能は車種次第だ

■スポーツカーではMTの資産価値と嗜好性が依然高いといえる

AT主流時代にあえてMTを選ぶ理由

 2025年4月からは、MT車を運転できる免許の講習もAT車で行うことになった。そしてATの教習過程を終えたあとで、MTの教習を別途受ける仕組みだ。こうなるとMTが特殊な免許に思えるが、2024年に第一種普通運転免許を取得したドライバーのうち、AT限定は全体の68%だ。残りの32%はMTも運転できる。

 そこで、MTが推奨されるクルマを考えてみたい。現行モデルでMTしか設定されていない国産乗用車は存在しない。MT専用のグレードはあっても、専用の車種はない。いい換えれば、MT車の購入はAT車との選択によって決まる。

 基本的には運転スタイルなどの使い方や好みで選べばいいが、それ以外の要素も考えたい。まず、価格は車種によってはMT車が安い。

 たとえばヤリスに1.5リッター直列3気筒ガソリンエンジンを搭載した”Z”は、無段変速ATのCVT車が223万7400円で、6速MT車は213万4000円だ。MT車とCVT車では、安全装備などに若干の差はあるが、約10万円の価格差には達しない。つまり、MT車の価格をAT車よりも割安に抑えている。

 しかしいまは、AT車とMT車の価格を同額にする車種も増えた。たとえばジムニーとジムニーシエラは、以前は5速MT車が4速AT車よりも安かったが、改良を受けたいまは同価格だ。ジムニーノマドは安全装備の違いもあって5速MT車が安いが、改良を受けると同額になる可能性が高い。

 この背景にはコストの変化がある。以前はMT車の製造コストが安いとされたが、いまはAT車の生産台数が圧倒的増えて、量産効果によりAT車が割安になった。そのために同じ価格にする車種が増えた。

 購入後の維持費を左右する燃費の優劣は、車種によって異なる。ヤリスでは、1.5リッター直列3気筒ガソリンエンジンを搭載する6速MT車のWLTCモード燃費は19km/L、CVT車は21.0〜21.3km/Lと、CVT車の燃費性能が勝る。

 一方、スイフトMXでは、1.2リッター直列3気筒マイルドハイブリッドの5速MT車は、WLTCモード燃費が25.4km/Lになり、CVT車の24.5km/Lよりも優れている。このようにMTとATの燃費の優劣は車種によって異なるが、一般的にはCVT車が良好だ。CVTは無段変速ATで、走行状況に応じて最適なギヤ比に調節できるからだ。

 そして数年間にわたって使ったあとの売却額は、トランスミッションの人気度によって異なる。ロードスター、GR86、フェアレディZなどのスポーツカーはMTの人気が高く、数年後にATよりも高値で売却できる。このほか、修理代でも差がつく。今日のATは、CVTや2組のクラッチを使ったタイプだから構造が複雑だ。修理にも手間を要する。ただし、販売店に尋ねると「走行距離が相当に伸びた車両でない限り、CVTのトラブルによる入庫は少ない」という。


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渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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