バンコクの人は日本車の質感を求めている
最初は上海汽車系MGブランドのEPという、ステーションワゴンタイプのBEVタクシーが目立ってきた。タイではステーションワゴンというカテゴリーが存在しないので、「ステーションワゴンってなに?」というここで、あえて斬新に映るステーションワゴンでしかもBEVという組み合わせは、それまでトランクにガスタンクがあり、積載性能にやや難のあったタイのタクシーではまさに革命がもたらされた。
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MGはICE(内燃機関)車からとなるが、タイでは20年に及んで展開しており、ブランドへの信頼性も得ているので、「このままEPがタクシー車両として覇権を握るのかなあ」と思っていたら、広州汽車(GAC)のBEVブランドとなるAIONのESというカローラ アルティスよりやや大きいセダンタイプのBEVタクシーが登場した。
ES自体、タクシーを主眼に置いたほぼフリート販売専用車となるのだが、価格は92万9900バーツ(約450万円)となっており、個人タクシーとしてドライバーが所有しているケースもあるが、大半は法人所有車をレンタルして、営業運行しているようである(タイでは車両を事業者などから借りてタクシーを運行するのが一般的)。
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しばらくMG EPとAION ESが張り合うなか、BYDのこちらもフリート向けとなるe6というモデルも着々とタクシーとして台数を増やしていた。
そして2025年11月下旬から12月上旬にかけバンコクを訪れると、AIONがメーカーで2台目となる、クロスオーバーSUVスタイルのBEV、AION Yのタクシーが大量に走っていた。2025年3月にバンコクを訪れたときには見かけなかっただけに、急速にその数を増やしたことになる。調べると2025年10月にはタイ国内のタクシー車両シェアナンバー1にAIONブランドが輝いたとされていた。
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AION ESは実際乗ってみると、サイズの近いカローラ アルティスには到底及ばない乗り心地となっていたのだが、今回Yに乗ってみるとESでの嫌な印象はなく快適なものとなっていた。MG EPは本拠地の中国では栄威(ロエベ)ブランド車としてラインアップされ、上海ではタクシーとしても活躍。タイのEPでは後席座面もたっぷりしていて快適だった。こうして2台を比べてみると、中国のロエベ版ではぺちゃんこになった座布団的な印象を受けた。長い間日本車に乗り続けたタイの人だからこそ、中国仕様のままもってくるのは、目が肥えているので難しいのではないかと、ある事情通は話してくれた。
今後バンコクのタクシーは政府の思惑もあり、BEV化100%をめざして政策が進んでいくことになるだろう。現状、主に中国系で3ブランドがすでにBEVタクシーをラインアップしている状況となっているが、AIONがかなり飛ばしている印象が強いので、このままいくと近い将来バンコクはAIONタクシーだらけになってしまうかもしれない。一方でまだまだ波乱の連続なっていくのか、カローラの楽園はなくなってしまったが、今度はBEVタクシー覇権争いの行方が気になりだしてしまった。