敗因はホンダらしくなかったことにあり
そんな2代目NSXは、コンセプトモデルから市販化までは幾度もの紆余曲折を繰り返した。当初は初代と同じくV型6気筒を横置きで搭載するレイアウトを検討していたが、のちにエンジンは縦置き搭載へ変更されツインターボ化。また左右の前輪にひとつずつ、さらにミッドシップマウントされたエンジンにもひとつと、車両全体で計3つのモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用。駆動方式は前後左右の駆動力を電子制御により自在に振り分けるSH-AWDで、トランスミッションはデュアルクラッチ式のみとなり、MTは設定されなかった。
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ホンダのもてる新世代技術を、すべて詰め込んだ見本市のようなクルマとなった2代目NSXは、世界中の自動車メーカーが環境問題への対応を迫られるなか、新世代スーパースポーツとして目指すべき姿を提示した。いっぽうで誰にでもスーパースポーツの世界を楽しめるという敷居の低さ、デイリーユースからサーキット走行までを可能にする多様性、高い信頼性といった特徴は初代NSXから受け継いだ点といえる。
低速域や近距離ではCO2を発生させるエンジンの力を頼ることなく、モーターだけで走行することも可能な先進性や優れた燃費は、ともすれば社会悪と見られがちなスーパースポーツに新しい価値を示したが、そんな崇高な志や優れたメカニズムを満載した代償として、新型NSXの車両価格は上昇した。北米市場では15万6000ドルから20万5700ドルで、初代NSXと比較して2倍以上。2017年からは日本市場でもデリバリーが開始され、車両価格は2370万円とされた。
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その後、2019年5月にマイナーチェンジを実施し、2021年にはNSXタイプSを発表。車名からするとバリエーション追加のように思えるが、代わりに標準モデルがラインアップから姿を消すという事実上のビッグマイナーチェンジで、NSXタイプSは専用形状の前後バンパーをはじめ、エクステリアはほぼ刷新された。エンジン本体やタービン、冷却系など補機類のほとんどに手が加えられたことにより、システム最高出力610馬力(従来は581馬力)、システム最大トルク667Nm(同646Nm)まで出力を向上。しかしNSXタイプSは世界全体で350台の限定生産に留まり、そのうち日本市場への導入は30台のみとされた。
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2代目NSXの日本国内における登録台数は、2017年〜2020年の4年間で464台。2021年モデルはNSXタイプSの30台のみであり、これ以外に「販売はされたものの登録されていない」というコレクターの所有車両を加えたとしても、500台前後というところ。約15年間にわたって販売された初代NSXと比べると、その違いは明らかだ。
第2世代NSXが短命に終わった最大の理由は、やはり車両価格にあるだろう。前述のように最新技術を詰め込んだ反面、約2400万円からという価格はあまりにも高すぎた。F1で最強の名を欲しいままにしたホンダは、軽自動車やミニバンを開発・販売している大衆車メーカー。いわば「私たちのホンダ」が圧倒したから多くの支持を集めたのであって、富裕層のみを顧客とするような価格設定はホンダらしくないと判断されてしまった。
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また初代NSXを伝説的な存在へと押し上げた、NSX-Rのようなストイックモデルが設定されなかったことも、2代目NSXはリアルスポーツよりも快適性を重視したグランドツアラー色の強いモデルであり、ホンダらしさに欠けると評される要因となったように思える。
しかし中古車市場を見てみると、第2世代NSXはその稀少性もあって高い人気を誇っている。2017年の初期モデルであっても2500万円前後からと、ほぼすべての車両が新車価格を超えるプライスボードを掲げている。駆動制御などに変更を受け、走りが大きく進化した2019年モデルは売りに出るケースが少ないが、こちらは4000万円前後が相場という印象。最終進化系であるタイプSについては、そもそも30台しか日本国内には発売されていないため、いまだ中古車市場では姿を見かけることがほぼない。
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思えば、初代NSXもその評価が高まったのは、生産終了後しばらくが経過してのことだった。ハイブリッドシステムを搭載した新世代スーパースポーツである2代目NSXは、その先進性が正しく評価されるにはもうしばらくの時間が必要なのかもしれない。