同じに見えるメカニズムも一部だが異なる
さて、問題はメカニズムである。スペックシート上での差異はまず見られない。タイヤサイズはもちろん、ホイールのリム幅もオフセットも同じ。LSDも両者ともにヘリカル式。6速MTの各ギヤ・ファイナルギヤのギヤ比、前後スタビライザーの太さなど、可能な限りあらゆる点を確認したが、どれもまったくもって同じか、あるいは表記による誤差の範囲だろうという差しかなかった。
唯一わかりやすく数値が違うのが、シビックタイプRが330馬力、インテグラタイプSが320hp≒324.5馬力というエンジンパワーだ。これはSAEによる計測方法の違いから生じたブレの範疇と考えたほうが自然だろう。それぞれ専用のチューニングが施されているといったことも、オフィシャルからのアナウンスはとくにない。
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しかし、少し引っ掛かる点もいくつか残る。エンジン型式がシビックタイプRがK20C1、インテグラタイプSがK20C8と異なっているのだ。圧縮比を含めた各諸元も同じなので、エミッション等の絡みによって仕向地ごとに変わっているのかとも考えられるが、北米市場向けのシビックタイプRが搭載するエンジンもK20C1なので、どうやらそういうわけでもなく、エンジン製造後に車体へ組み付けられる工場によって決まる様子(シビックタイプRは埼玉県の寄居工場、インテグラタイプSはアメリカのメアリーズヒル工場で生産)。
その北米市場向けのシビックタイプRのスペックが、さらに話をややこしくする。その最高出力は315hp≒319馬力と、日本市場向けのシビックタイプRともインテグラタイプSとも若干異なるのだ。一方でトルクについては、北米市場・日本市場それぞれのシビックタイプR、インテグラタイプSですべて同一の数値となっている。
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かなり調査したのだが、パワーの差異についての真相は闇の中……というのが正直なところだった。それぞれの数値の連関から考えれば、ひょっとしたら日本に入ってくるインテグラタイプSはK20Cシリーズ最強のカタログスペックを得ることになるかもしれない。
そして興味深いのが足まわりだ。デュアルアクシス・ストラットなど、基本的なアーキテクチャは両車共通。サスペンションについても、変更点などはオフィシャルには特段発表されていない。しかし、海外フォーラムを調べまわってみると、どうもまったく同じというわけではないということがわかってきた。というよりむしろ、サスペンションまわりがメカニズムにおける最大の差異といえるようだ。
その根幹となるのが、電子制御ダンパー用ECUだ。シビックタイプRもインテグラタイプSも、前述のドライブモードセレクターを通じてダンパーのセッティングを調整できるのだが、そのモードごとの味は電子制御による減衰力のコントロールによって出している。そのセッティングが両車で大きく異なるらしく、アメリカのユーザーの間では、シビックタイプRの電子制御ダンパー用ECUをインテグラタイプSのそれに交換することで乗り味をソフトにするカスタムがそれなりにメジャーとなっているようなのだ。ちなみに、リヤサスペンションのみスプリングレートも異なる様子である。
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ここまで差異を見てきたが、やはり巷の評判に違わず、走りのシビックタイプR、ラグジュアリーさに振ったインテグラタイプS、という方向性の違いと見て間違いはないだろう。先代FK8型よりだいぶ落ち着いたとはいえ、シビックタイプRの体育会系な感じがちょっと……というユーザーには、インテグラタイプSは強力なオルタナティブとなってくれることだろう。
そこで気になってくるのが、まず左ハンドルのみの設定となる点。この場で左ハンドルのデメリットを論じることはしないが、多くのユーザーにとってそれなりに高いハードルであることは否めない。
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そしてなにより懸念されるのが、現時点では発表されていない販売価格だ。インテグラタイプSの北米での販売価格は5万3400ドルと、邦貨換算で約843万円となるプライスタグが掲げられている。ちなみに北米でのシビックタイプRの販売価格は4万6895ドル=約740万円だ。
販売台数を絞ることも明言されているし、出血大サービスで700万円台……なんて都合のいいシナリオを望むのは厳しいだろう。インテグラタイプSに独自の魅力があることは確かだが、シビックタイプRに対してどこまでのエクストラフィーを許容できるかは悩ましいところである。