911 GT3初のオープン「S/C」はスピードスターの再来か? 歴代すべてが伝説の「スピードスター」の歴史と哲学 (2/2ページ)

スピードスターの哲学は911に受け継がれた

 1988年、911に初のスピードスターが登場する。いわゆる「Gシリーズ」最終世代にあたる930型をベースにしたこのモデルは、ワイドなターボルック仕様とナローボディ仕様を設定。最高出力231馬力の911カレラをベースに2103台が生産され、911ファミリーのなかでもっともオープンエアを感じられるモデルとして高い人気を集めた。

 1993年には、964型をベースにした新しいスピードスターが登場した。ルーフを手動でより扱いやすく改良し、リヤのプラスチック製カバーのロック機構も最適化。内装にはボディと同色に塗装されたカレラRSバケットシートという特別仕様が奢られた。一方でエアコンやパワーウインドウといった快適装備はオミットされ、当初はエアバッグすら装備されなかった。生産台数は通常ボディが930台、ワイドターボボディが15台となった。

 歴代スピードスターのなかで、桁違いに希少なのが993型をベースにした1995年製だ。生産台数はたった7台。その最初の1台は、ポルシェのデザイン部門を担った巨匠フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ自身のために開発されたもので、グリーンのボディに17インチホイールとティプトロニックSトランスミッションを組み合わせたカレラボディ仕様だった。2台目は米国の俳優ジェリー・サインフェルドのために製作。こちらはシルバーのターボワイドボディに18インチホイールとマニュアルトランスミッションという仕様で、ファン向けに市販された台数はさらに限られる。

 993に続くスピードスターの登場は、じつに15年後まで待たなければならなかった。2010年10月のパリモーターショーで世界初公開された997型スピードスターは、ポルシェ・エクスクルーシブ・マニュファクトゥール設立25周年を記念した特別モデルとして位置づけられた。3.8リッター水平対向6気筒から408馬力を発生し、手動で操作するフラットなソフトトップとリッド上の特徴的なダブルバブルが個性を主張。先祖へのオマージュとして生産台数は356台に設定され、日本市場にはわずか6台のみが正規輸入された。

 続く991型では、2018年にポルシェスポーツカー70周年記念として発表されたコンセプトカーが絶大な反響を呼んだことから市販化された。911 GT3譲りの500馬力超の自然吸気エンジンに6速MTのみを組み合わせ、独特のウインドウスクリーンとダブルバブルデザインを継承。さらにGT3スタイルのフロントバンパーやセンターロックホイールなど、一気にスポーツ性を高めた。

 現状、スピードスターは991型を最後に、992型では登場していない。だが今回、冒頭で述べたようにGT3シリーズ初のオープンモデル、911 GT3 S/Cが発表された。スピードスターの名こそ冠しておらず、デザイン上の大きな特徴であった手動ソフトトップやダブルバブルデザインも継承されていないものの、実質的にGT3のオープントップ・バージョンだった991スピードスターから考えれば、いたって正当な進化系と見ることもできる。

 余分なものを削ぎ落としオープンエアの疾走感を最大化するという「スピードスター」の哲学は、911 GT3 S/Cに受け継がれ、新たな章へと突入したのかもしれない。


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