【試乗】新型エルグランドの「打倒アルファード」の答えがこれだ! 驚異のトルク500Nmと圧倒的静粛性の一方で「課題」も見えた (2/2ページ)

新装備「スムースストップ」は改善の余地あり

 ブレーキフィールにも注目すべき点があった。停止直前に制動力がふっと抜けるような制御が入り、カックン停止を防ごうとしている。一般的なドライバーが雑にブレーキを踏んでも滑らかに止まれるようにする狙いは理解できる。しかし、常に踏力を調整して滑らかに止めているベテランドライバーにとっては、自分の操作より先にクルマがブレーキを抜いてしまうように感じられ、違和感がある。初見では「ブレーキが抜けた」と一瞬不安になる場面もある。可能であれば、この停止直前制御は、ドライバーの総合的な操作を反映させるか任意で解除できるオフ設定があると望ましい。

 室内の質感は高い。インパネの造形は水平基調で、視覚的な広がりがある。デジタルインナーミラーは従来よりも視線距離が自然で、老眼の自分にもピントを合わせやすい。

 BOSEの22スピーカー仕様では、アクティブノイズコントロールと3Dサラウンドの両立も図られている。遮音ガラスは前席から2列目までを中心に採用され、1列目、2列目の静粛性は非常に高い。ただし、3列目やリヤ側からの音は相対的に残る。これはコストや重量との兼ね合いだろうが、プレミアムミニバンとしては後席全体の音質感をさらに揃えてもらいたいところだ。

 ユーザーインターフェイス(UI)には改善余地がある。e-PedalやEVモードのスイッチは操作頻度を考えるとやや遠い。ドライブモード表示も小さく、モードを切り替えたときの視覚的な演出が控えめすぎる。エルグランドほどの存在感をもつクルマなら、スポーツ、コンフォート、スノーなどのモード変化を、メーターやセンターディスプレイ上でもっと明確に表現してもいいだろう。タコメーターがないことは、発電専用エンジンの性格を考えれば合理的だが、エンジンがいつ始動し、どの程度稼働しているのかを知りたいユーザーもいるはずだ。

 新型エルグランドは、アルファードに対する単純な追従車ではない。むしろ電動駆動と四輪駆動制御によって、前後方向のフラットライドと静粛性を極めようとした日産らしい技術主導の高級ミニバンだ。とくに長距離移動する場面で、その価値は非常に高い。大トルクモーターによる余裕、e-4ORCEによる姿勢制御、圧倒的な静けさは、まさにプレミアムグランドツアラーの名にふさわしい。

 ただし、完成度という意味ではまだ磨き込む余地がある。ロール方向の乗員負担、停止直前のブレーキ制御、シートホールド、2列目以降の振動質感、UIの視認性。これらはスペック表には出にくいが、実際に長く乗れば効いてくる部分だ。とくに家族や大切な人を乗せるクルマであるなら、速く曲がれることより乗員が不快なGを感じないことのほうが重要になる。旋回中の駆動力を横Gに応じて穏やかにフィードバック制御するなど、快適性優先の制御思想をもう一歩進めてもよい。

 それでも、新型エルグランドがもつポテンシャルは相当大きい。アルファード一強の市場に対して、日産はようやく対等に競える「答え」をもち込んだ。単なる復権ではなく、エルグランドというネーミングを電動時代のグランドツーリングミニバンとして再定義しようとする意欲が感じられるのだ。


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