課題はパワートレイン! 2027年登場のフルハイブリッドが気になる
一方で、パワートレインには課題も残る。2.5リッター自然吸気エンジンは発進初期にジェネレーターモーターのアシストが加わるため、街なかの出足は軽い。アクセルを軽く踏んだ瞬間にトルクが立ち上がり、ストップアンドゴーでは扱いやすい。低速でギクシャクしにくく、住宅街や渋滞路では自然に走れる。
しかし速度が乗ってからの加速感は、従来のディーゼルターボがもっていた太いトルク感に及ばない。エンジン本体の力に頼る中速領域以上では回転を上げて保つ必要がある。高速道路を100km/hで巡航しているときのエンジン回転は6速で約2000rpmだが、追い越し加速でアクセルを踏み込むと5速を飛び越えて4速まで落とすようなキックダウン制御が入ることがある。6速ATのギヤ比は基本的に先代からの継承であり、車体が大きくなり、ディーゼルの大トルクを失った新型には、やや合わない場面があるのだ。
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街なかでも、1速で引っ張る時間が長く、2速へつながった瞬間にエンジン回転の慣性で少し押し出されるようなフィーリングが出ることがあった。発進初期は軽快なのに、その直後の変速で流れが乱れる。ここは今後の制御熟成で改善できる領域だろう。エンジンそのものは素直で扱いやすいが、車両重量とギヤ比、モーターアシストの使い方を含めた統合制御には、まだキャリブレーションの伸び代があるようだ。
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静粛性は全体として高い。市街地ではエンジン音の室内への遮音性が高く、ロードノイズもよく抑えられている。ただし、グレードによって印象は異なる。上級グレードでは遮音材や内装の質感によって落ち着きが増す一方、SやGでは路面によって荷室側からの音がやや入りやすい。とくに気になったのは荷室のトノカバーである。従来型ではバックドア開閉と連動する巻き上げ式の優れた構造を採用していたが、新型では一般的なフック式となった。荷室の質感や音の遮断という面では、ここはコストダウンを感じさせられてしまう部分だ。
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後席の快適性は確実に高まった。足もとの余裕は明らかで、シートバックのリクライニングも実用的である。上級グレードでは後席シートヒーターのスイッチがセンターコンソール後端の左右に配置され、アームレストを倒さなくても操作できるようになった。先代ではセンターアームレスト内にスイッチがあり、3名乗車時には使いにくかった。こうした細部の改善は、日常で長く使うほど効いてくる。
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新型CX-5のもうひとつの大きな変化はHMIである。Google搭載により、音声操作の実用性が大きく高まった。エアコン温度の変更、目的地検索、音楽再生などを声で操作できる。運転中に視線を大きく動かさず、手もと操作を減らせることは安全にもつながる。大型ディスプレイは視認性が高く、しかし前方視界を一切阻害しない。360度ビューモニターでは周囲の状況を画面上で回転させながら確認できる。床下透過ビューも用意され、狭い場所での取りまわしや駐車時には大きな助けとなるだろう。
ただ、個人的にはあまり頼りたくはない。肝心な部分はやはり自身の眼で直接確認する方が安心だ。
先進安全装備では、ドライバー異常時対応システム、渋滞時ハンズオフアシスト、車線変更アシストなどが採用された。車線変更アシストは自動車専用道路で70km/h以上の条件下で作動し、セットボタンを押したうえでワンタッチウインカー操作を行うと支援が入る。渋滞時ハンズオフアシストは40km/h以下の渋滞判定時に作動する。マツダは過度にクルマ任せにするのではなく、ドライバーを中心に据えた支援を重視してきたが、新型ではその思想を保ちながら支援領域を広げたといえる。
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新型CX-5は、スポーツSUVとして鋭さを追い求めたモデルではない。むしろ、家族で使い、荷物を積み、日々の移動をラクにし、休日には少し遠くへ出かける。その日常の幅を広げるためのSUVである。だからこそ、ホイールベースの延長、後席の拡大、荷室の使いやすさ、視界、音声操作、安全支援といった要素が重要になる。
走りの面では、シャシーの完成度が高い。軽いステアリング、しなやかな足まわり、AWDでも重さを感じさせないバランスは評価できる。一方で、2.5リッターガソリンマイルドハイブリッドと6速ATの組み合わせには、力強さと変速制御の面で課題が残る。従来のディーゼルターボを知るユーザーほど、その差を感じてしまうだろう。
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現時点でもっとも薦めたいのは、GまたはSのAWDである。上級装備を重視するならLの魅力は大きいが、乗り味のしなやかさと価格のバランスを考えると、中間グレード以下にも新型CX-5らしさが濃い。SUVとしての安心感を求めるなら積極的にAWDを選んでいただきたい。
新型CX-5は派手な驚きで魅せるクルマではないが、乗り込み、走り、後席に座り、荷室を使ってみると、生活のなかで効く改善が随所にある。ただ、燃費や燃料代を重視するユーザーには旧モデルとなったディーゼル仕様と同様の価値は見出せないだろう。2027年に登場するとアナウンスされたフルハイブリッドモデルが、ディーゼルを超える実用燃費で登場させられることを願いたいところだ。
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