そりゃスバル車を買いたくなる! 何十億円かけてでも「安全を生み出す」現場を見たら感動モノだった (2/2ページ)

スバル車の驚異的な安全性を目の当たりに

 この日行われたのは、「新オフセット前面衝突」というもの。これは、2024年からJNCAPで導入された新しい前面衝突実験となる。自身のクルマに乗る乗員の安全性と相手側へのダメージをどれだけ軽減できるかをチェックして点数化するもので、それぞれが50km/hずつの速度で走ってくることで、相対100km/hの衝突データが取れる。今回走らせるのはもちろんフォレスターで、相手の台車にはアルミのハニカム構造の物体がついており、これの潰れ具合も試験するそう。台車の重さは1200〜1400kg相当だという。なお、我々メディアに「こうやります」と見せるだけでなく、ちゃんとデータも取るとのこと。

 実験場は巨大な倉庫っぽい施設の内部。スバル側からは「物凄い音がするので、驚いてカメラなどを落とさないように」と脅されたほか、「長袖長ズボンで、防護メガネを必ずつけてください」とアナウンスされ、実験はスタート。正面からぶつけるクルマに当然人が乗っているわけがないので、両車ともワイヤーで牽引され、シャー……という音ととも両車が筆者の真正面に現れた。

 次の瞬間、文字にできないような凄まじい衝撃音、いや、爆発音や破裂音ともいえる、アナウンスどおりの物凄い音が会場に響き渡り、一瞬の静寂が訪れた。そして目の前にはぐしゃぐしゃになったフォレスターと台車。あたりはクルマの破片などから出た粉塵が舞っていた。

「これから事故を起こすのでそこで見ててください」なんてことは、日常生活をおくるうえであり得ない事案なので、一瞬の出来事であったが、かなりの迫力を伴う非日常の瞬間だ。

 さて、ここからの主役はこのぐちゃぐちゃになったフォレスターである。使われたモデルはスポーツというグレードで、「そこ(矢島工場)のラインから引っこ抜いてきました」という量産市販車とまったく同じ車両。データを取る機械を装備した以外は無改造。そして、このぐちゃぐちゃのフォレスター、どう見ても悲惨な状況であるが、ここからがスバルの凄さだ。

 なんとこの状態で、車両の全ドアが問題なく開くという。さらにはフロントガラスもほとんど割れず、乗員保護とそのあとの救助を最優先した設計になっている。「Aピラーより前でなるべく潰してキャビンを守る」というのが、スバルの考え方なんだそう。

 筆者は過去に、20〜30km/h程度で衝突したというここ5年以内に生産された比較的新しいコンパクトカーの事故車を見たことがある。しかし、そのクルマは運転席側のドアが開かず、助手席しか開かないという状態であった(相手方の車両はほぼ無傷)。それよりもはるかに大きい力を加えていてこの剛性、これを見てしまったらスバルを選びたくなるのも頷ける結果だ。

 ちなみに、こういった試験で使われた車両は、専門業者を介してほとんどがリサイクルされるそうなので、無駄になることはないとのこと。筆者は貧乏性なので、「走行距離数キロの新車……直して乗れないのか?」とも思ったが、さすがに新車を買ったほうが安そうだ。

 余談だが、この手の車両によく乗っているこれらダミー人形はセンサーの塊で、1体1億〜3億円するそう。小型なものや旧型で数千万円とのことだ。なおスバルでは、こうした実験を年に数百回もおこなって、データを収集しているとのこと。毎回クルマを潰すので、掛かる費用は半端ではないが、そうした過酷な試験のうえで、安心安全なクルマが生まれていると思うと、スバルに足を向けて寝られない。

 なお、これは社内の試験であるので何度もできるが、JNCAPで行う試験は1発勝負。しかもこちらで使うクルマは、NASVA側で「世間一般の関心があるクルマ」「多くの人が選んでいるクルマ」「手の届きやすい価格のクルマ」など、平たくいえば、よく売れているクルマを選ぶことが多いという。さらに、メーカーの協力は一切得ず、一般客同様にディーラーで3台ほど購入するそうだ。「衝突試験で使う」なんて、ディーラー側もさすがに思わないだろう。なので、フェアで厳格なテストができるというわけだ。その成果が今回のフォレスターのファイブスター大賞獲得につながっている。

 ここまでスバルの安全性を紹介してきたが、「それってクルマに乗ってる側の話じゃん。歩行者は無視か?」となった人へ向けて、もうひとつスバルの技術を紹介したい。それが、「サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ」の採用だ。自転車好きの人であればご存じかもしれないが、スバルは日本で開催されるUCIプロシリーズ(男子自転車ロードレースの最高カテゴリーUCIワールドツアーに次ぐカテゴリー)の1戦であるジャパンカップサイクルロードレースのオフィシャルカーをはじめ、自転車チームやサポートチームへ車両を供給しており、自転車業界とも根強い関係を長年もっている。

 そんなスバルだからこそ考えたのが、この「サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ」だ。自転車とクルマの事故は少くないが、自転車に乗っている人が重傷を負う、または亡くなる事故の場合、多くはなんとAピラー周辺に頭をぶつけているというデータがあるそうだ。地面ではないのが驚きだ。たしかにAピラーは、クルマの剛性を確保するうえで欠かせない部分なだけに、とくに強固に作られているのは触ってみると一目瞭然。そこをはじめ、ボンネットやフロントウインドウに人が当たらないようなエアバッグを、スバル車では、フォレスターやレヴォーグなど、代表車種6モデルに採用している。

 仕組みは単純で、フロントバンパー内のビームにシリコンチューブが通っており、衝突した人の足などがそのチューブを潰して、圧力を検知すると展開されるという。0.1秒ほどで展開されるので、先に頭部が車両に当たる可能性もかなり低いそうだ。構造は車内のエアバッグなどと同じとのこと。

 スバルの関係者は「交通死亡事故ゼロという目標は、メーカー側だけでなくユーザー頼りの面ももちろんあります。しかし、だからといってやらないのではなく、それを目標にクルマ作りをしていくことが、我々スバルの使命です。無理だからではなく、やることに意味があるんです」と語る。

 スバルの安全に対する並々ならぬ情熱が垣間見えた、衝撃的な取材会であった。


この記事の画像ギャラリー

WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

愛車
ホンダ・シビックタイプR(EK9)/スズキ・ジムニー(JA11)
趣味
写真/ドライブ/サーキット走行/クルマ弄り/スノーボード/ダーツ/自転車/その他多数
好きな有名人
大泉 洋/織田裕二/篠原みなみ

新着情報