ヴェイロンに挑むと意気込んだスイスの「ウェバーF1」! いつの間にか立ち消えた謎のプロジェクトの中身 (2/2ページ)

謎を残したままプロジェクトは頓挫

 そしていつの間にか初号機は姿を消し、2013年にBMW製5.6リッターV10エンジンを搭載したマシン「ウェバーF1」が登場。排気量こそ下がっているものの、このエンジンはエンジン・オブ・ザ・イヤーを2年連続受賞するほどの優れもの。具体的にはアルジル合金の軽量&高剛性ブロックや、クランクケースをラダーブレードで締め付けるなどF1レベルの高出力に対応しているのが大きな強み。そして、今度はツインターボを選び、最高出力1200馬力をたたき出し、ヴェイロンの1001馬力を凌駕してみせました。

 が、ここで識者が「900馬力の初号機と、1200馬力のウェバーF1が0-100km/h加速タイムが同じ2.5秒とは奇妙じゃないか」と指摘。さらに、ウェバーは自社製の6速シーケンシャル・セミオートマで40ミリ秒の変速を謳っているにもかかわらず、加速タイムがヴェイロンと同じというのも納得いきません。

 また、ウェバーF1の最大トルクはヴェイロンと同じく1250Nmと凄まじいもので、ミッションが素早いシフトチェンジに耐えきれるかどうかも大きな疑問。ちなみに、ヴェイロンは7速のDSG(デュアルクラッチシステム)を専用開発し、さらにはスリップコントロールも別途用意。数字や装備を声高にアピールしたウェバーでしたが、こうした指摘に対しては沈黙を守るのみ。発表時もCGで作成された姿があるだけで、走行の様子などは未公開。これでは、発売前に予約を募集しようとも振り向いてくれる大金もちはいないでしょう。

 パワーや空力のほかにも、インテリジェント4WDや可変式アクティブ・エアブレーキといった新技術を盛り込んだと発表されたものの、CGイメージがあるだけで実車は影も形もありません。これでは、打倒ブガッティを目指すあまりの勇み足と取られても仕方ないでしょう。こうした夢のあるクルマの場合、投資家の金を目当てにした打ち上げ花火というケースも散見できますが(むしろ多め⁉)、ことウェバーについては精密機械メーカーという実績があっただけに詐欺めいた計画とは信じたくないもの。

 残念ながら、ウェバーF1プロジェクトは資金難により完全に頓挫(実質的な倒産・プロジェクト破棄)しており、実際に製造された初号機の行方すらわかっていません。ドン・キホーテの物語は切なくも笑いに絶えない名作でしたが、リアルな打倒ブガッティは冷酷で生臭い大人の事情にまみれた「未完の設計図」に過ぎなかったのです。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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