足まわりの変更で生じる基準値とのズレ
近年、燃費/電費の向上を目的にトー角を0度に設定するメーカーが増えている。しかし、これでは左右輪で押し引きする力が発生せず、直進性を保つのは難しい。
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そのためスクラブ(タイヤ接地面の中心とキングピン延長の接地点との間隔)を変化させ、ネガティブスクラブとすることで外乱に強いトー剛性を確保するなどの取り組みが行われている。
スクラブ値はホイールのオフセット値を変えるだけでも変化し、タイヤの幅や偏平率などとも関連しているので、タイヤ&ホイールを純正と異なるサイズに換える場合は注意が必要だ。
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そして、ホイールアライメントを設定する際は、事前に水平台の上で4輪それぞれに加わる荷重を計測することも必須となる。
ミッドシップレイアウトのレーシングカーであれば、前後・左右の荷重配分が50:50という理想値に設定可能だが、横置きエンジンのFF車の場合、前後・左右とも軸荷重が大きく異なる。乗員数、燃料や荷物の搭載状況などによっても変化し、軸荷重差の大きいクルマではスタティックな状態でホイールアライメントを調整しても効果を引き出すのが難しい。よって、設計段階からバランスのいいクルマづくりが求められるのだ。
求められる定期的な点検違和感を察知する感覚
ホイールアライメントが狂う主な原因は、外的衝撃と部品の劣化だ。
縁石の乗り上げや、段差を乗り越えたり、路面の凹凸を通過した際の衝撃、さらに事故でサスペンションアームやステアリングリンクがわずかでも曲がれば、ホイールの取り付け角度にズレを生じる。また、ゴムブッシュやボールジョイントの摩耗によってもサスペンションの可動軸にガタが発生し、意図しない角度変化を引き起こす。
このようなズレは、ハンドルセンターの偏り、直進性の低下、旋回時の操舵力変化、ブレーキング時の安定性などに影響を及ぼす。さらに、タイヤの偏摩耗に加え、燃費や乗り心地にも直結してくる。
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ゆえにスポーツカーに限らず、ホイールアライメントは定期的に点検することが求められるのだ。とくに、タイヤの交換や、サスペンションの変更を行う際は、4輪のホイールアライメントに及ぼす影響も考察し、測定・調整を確実に実施すべきである。
モータースポーツの現場でのホイールアライメント調整の効果が発揮されるのは水平な台の上ではなく、コース上だ。路面の勾配、コーナーのRや傾斜、縁石、路面とタイヤのμ(摩擦係数)以外に、速度やGフォースなど、さまざまな動的要因が加わるダイナミック領域で、どのような動きをするのかを予測し、実走して確かめることが重要となる。
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ここで求められるのが、サスペンションジオメトリーに関する知識とノウハウだ。
仮に、いくらキャンバー角をネガティブに大きくつけたとしても、サスペンションストロークによって大きくポジティブに変動してしまうジオメトリーでは意味がない。さまざまな要素をつぶさに考察し、セッティングする必要があるのだ。
意のままに操れるハンドリング、そして安全性やタイヤの消耗、燃費性能など、すべての要素は、「ジオメトリーとホイールアライメントの整合性」から始まる。
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ドライバーがクルマの動きの違和感を的確に察知し、それを設計構造やセッティングと結びつけて解釈することが肝心だ。そして、その視点はサーキットでの限界走行でも、日常の街乗りでも変わらず求められるのである。
講師 中谷明彦
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武蔵工業大学工学部機械工学科(塑性工学専攻)卒。ジャーナリスト/レーサー活動とともに、新車やタイヤの開発にもかかわり、4WD車や電子制御による車両運動性能の解析を得意分野とする。1989年に日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員に就任。1997年より座学のみによるドライビング理論研究会「中谷塾」を開設し、現インディカードライバー・佐藤琢磨らを輩出。愛車はジープ・ラングラー(PHEV)。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年10月号」の記事を再構成して掲載しています