事故時にドアが開けられない恐怖! 先進的EVの象徴「格納式ドアハンドル」に規制の流れ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■デザインや空力性能の面から格納式ドアハンドルの採用例が増えた

■事故などが発生した際にドアが開けられないトラブルが世界中で続出した

■中国では法規制を進めており世界の自動車メーカーにその影響が及びそうだ

格納式ドアハンドルが抱える問題点

 最近のショールームで新型EV(電気自動車)に触れた際、ドアに取っ手が見当たらず戸惑った経験がある読者もいるだろう。車両に近づいたり、ボタンやタッチセンサーに触れたりすると、せり出してくる「格納式ドアハンドル」は、近未来的だとして近年人気を集めてきた。

 とくにEVの普及とともに目にする機会が増えた理由のひとつは、従来型のようにボディ表面から突出するドアハンドルをなくすことで、空力性能の向上や空気抵抗低減を期待できるため、電費、つまり1kWhで走行できる距離を少しでも伸ばしたいメーカーにとって、格納式ドアハンドル、いわゆるフラッシュドアハンドルは、デザイン的にもスタイリッシュで魅力的な解決策なのだ。テスラをはじめ、欧州の高級EVや中国のEVメーカーでも広く採用され、いまやEVらしいデザインの象徴のひとつになっている。

 しかし、その格納式ハンドルが、中国で大きな転換点を迎えている。衝突事故などで電源を失った際にドアを開けられるかという、乗員だけでなく救助者にも直接関係する問題が浮上し、中国が格納式ドアハンドルの国家規格による使用制限に踏み切ったのだ。中国発のこの動きは、果たして世界のドアハンドル設計をどう変えていくのだろうか。規制の中身と、各国の対応を追ってみたい。

<なぜ中国は格納式ドアハンドルを問題視するのか>

 禁止といっても、格納式という機能そのものが対象ではない。中国は2026年1月28日、自動車のドアハンドルに関する強制性国家標準「GB 48001—2026」(自動車ドアハンドル安全技術要求)を公布、2027年1月1日から施行される。

 内容は「骨子は、バックドアを除くすべてのドアの外側ハンドルに機械式のリリース機構を備えること、そして車内ハンドルについても、操作しやすく、乗員が容易に識別できることを求める点にある。電力が失われても、乗員や救助者が迷わず手の力でドアを開けられる状態を担保せよ」という趣旨だ。

 実際、2026年8月21日には中国国家市場監督管理総局(SAMR)がテスラ車のリコールを公告し、対象は国産・輸入合わせて約298万台に達した。理由は「車内の緊急用機械式ハンドルが内装色と近く識別・操作しにくいこと。深刻な衝突で低圧システムが失われた場合、乗員の脱出や外部からの救助に影響する可能性があること」などで、格納式ハンドルをめぐる安全性への懸念が、実際のリコールという形で表面化した。

 リコールはテスラだけではなく、中国メーカーを含む複数のメーカーが同じ問題をめぐって一斉に実施しており、その規模は合計400万台を超える。中国では過去最大規模の自動車リコールとなった。


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