中国EVの猛威と欧州車の苦境。激変する世界情勢の中で日本車が取るべき「次の一手」

この記事をまとめると

■BEVへの大規模投資を進めた欧州自動車メーカーが不振に直面している

■中国メーカーが欧州や東南アジアなど海外市場で存在感を強めた

■日本メーカーも慎重に競争力を高める必要がある

EVシフトの先頭を走った欧州に逆風

 イギリスではメディアの多くが「ジャガー&ランドローバーが4000人規模の雇用削減を2年かけて行う」と報じた。グループ全体の雇用者数は約4万3000人なので、全体の1割弱がその対象となるとも報じられていた。

 フォルクスワーゲンが世界で10万人の労働者を削減するとう報道には驚きを隠すことはできなかった。ドイツ国内4工場の閉鎖も今後進めるとしているのだが、そのうち閉鎖予定のある工場は、ドイツ以外の外資へ売却され、結果的に軍需工場に転換されるとのドイツからの報道があった。

 とにかく、ここ最近の欧州系ブランドに関する報道はネガティブなものばかりとなっている。その傾向の背景には、BEVの開発や生産への過大な投資のツケというものがよく取り上げられている。欧州各ブランドがBEVへほぼ全面的に舵をきったことは周知の事実。しかし、現状ではBEVの普及は世界規模で踊り場状態。まったく需要がないわけではないものの、欧州系ブランドが思い描いていたような状況とはならなかった。

 とはいうものの、所詮は高級ブランドが主体で進んでいただけの話で、量販ブランドとの温度差を筆者は感じていた。そこへきて中国系BEVが雪崩を打って世界各地で売られるようになった。中国経済がただならぬ状況下で、中国国内需要では、需要減だけではなく政府が介入するレベルの原価度外視の乱売もあるので、体力のあるブランドから海外市場、つまり輸出や現地生産に活路を見出すようになった。

 そもそも中国系ブランドでは量販・高級問わず政府主導で車両電動化が進んでおり、そのラインアップは多彩なものとなっている。そのため量販車でも豊富にBEVが用意されているのである。日本では「国の購入補助を外資モデルまで交付するのはいかがなものか」との話もあるが、自由なひとと物の往来を可能とするEUでは、中国車を完全排除することもできず、BEVを増やそうとすると中国車だけが目立って増え続けるというような事態となったことも、苦境に立たされる欧州系ブランドが多くなった一因だろう。

 中国と欧州各国はユーラシア大陸で地続きということもあり、中国国内で在庫となった中国仕様車(漢字車名プレートのある)も、広く欧州各国に流入しているとも聞いたことがある。車両電動化に興味津々の東南アジア各国でも、地理的に近く現地生産も行ってくれる中国系BEVがはるかにお得なこともあり、欧州系を抑えて普及の主役となっている。

 そもそもBEV販売に消極的なトランプ政権下のアメリカだが、中国とは貿易戦争下といってもいい状況であり、政府はフォードのBEVが中国系バッテリーなどを使っていることなどへ異例の非難を行ったとの報道もある。当面は中国車全面解禁とはならないようだが、アメリカも中国車解禁となればBEV普及は中国系メーカー主導となり、まずは韓国系ブランドからその影響をモロに被ることになるだろう。

 中国系メーカー以外はBEVになかなか手を出しにくくなっているといっていいだろう。ただ、先々のことを考えれば無視するわけにもいかない。いまのところ欧州のように大きな波を被ることはないものの、日本メーカーも防波堤を築きながら前に進んでいくしかないようだ。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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