ドン底に落ちるも復活の兆しを見せ始めた
フィアット傘下には、大衆車の「フィアット」とスポーツ志向の強い「アルファロメオ」、そして超高級スポーツの「マセラティ」「フェラーリ」が存在した。この巨大ファミリーのなかで、フィアット経営陣は「アルファロメオ=スポーティ」「ランチア=エレガント・高級路線」と無理やり住み分けを図ろうとした。
その結果どうなったか。ランチアの武闘派としてのDNAは封印され、WRCのワークス活動からも1990年代初頭に撤退。以降は「優雅な高級サルーン路線」へと強引に舵を切らされたのだ。
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だが悲しいかな、ドイツ御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)が圧倒的な工作精度でプレミアム市場を固めていくなか、奇抜なデザインと独特の乗り味だけで対抗しようとした高級サルーン「テージス」などは、セールス的に大惨敗を喫することになる。
スポーツ系の遺伝子を取り上げられ、プレミアム市場でもドイツ勢にボコボコにされたランチアは、自らのアイデンティティを完全に喪失してしまったのだ。
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そして2000年代後半、セルジオ・マルキオンネ率いるフィアットが経営破綻した米クライスラーを統合した際、ランチアに決定的なとどめが刺される。
手っ取り早くラインアップを拡充するため、クライスラーの大型セダン「300C」にランチアの盾形グリルを貼り付けて「テーマ」と名乗り、ミニバンの「ボイジャー」をそのまま「ランチア・ボイジャー」として欧州で売り出したのだ。
これが欧州のクルマ好き、とりわけランチアファンを失望させた。
「歴史ある名門に対する冒涜」「ブランドの安売り」と酷評され、セールスは見るも無残に沈没。欧州各国の販売網は次々と閉鎖され、ランチアは「イタリア国内で女性や若者向けのゲタ車としてイプシロンを売るだけ」という、事実上の籠城・冬眠状態へと追い込まれたのである。
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だがランチアの物語はまだ終わっていない。グループが巨大多国籍企業「ステランティス」へと再編されたことで、カルロス・タバレス前CEOらの号令のもと、アルファロメオやDSとともに、ランチアを「プレミアムクラス」として復活させる、10年計画が動き出しているのだ。
事実、新型「イプシロン」がEV/マイルドハイブリッドを引っ提げて欧州主要国への再進出を果たし、新型イプシロンHFおよび、1.2リッター直3ターボを搭載したラリー競技用ベース車「イプシロン ラリー4 HF」も2025年から、ワンメイクレース「トロフェオ・ランチア」やERC/イタリア選手権に参戦。さらに2026年以降には新たなフラッグシップ「ガンマ」、そして2028年にはファン垂涎の「デルタ」の復活までアナウンスされている。
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かつての栄光から転落し、一時は消滅寸前まで干からびていたランチア。
だが灰燼に帰したかと思われたそのエンブレムの炎は、いま再び静かに燃え上がろうとしている。オールドファンとしては、今度こそ経営陣の迷走に振りまわされることなく「誇り高きランチアの復活」が実現することを、祈るような気もちで見守るほかない。