イプシロン……ってどんなクルマだっけ? 日本じゃ超マイナーなクルマがイタリアではバカ売れしていた

この記事をまとめると

■ランチアが唯一ラインアップしているイプシロンが本国イタリアで売れているらしい

■FCA時代のランチアはブランドとしての独自性を失いランチアらしさが感じられなかった

■今後のランチアブランドの維持存続を願ってイプシロンの需要が伸びたと考えられる

ランチアの現状唯一のラインアップが「イプシロン」

 ランチアの「イプシロン」と聞いて、どんなクルマか頭に浮かぶ人はどれくらいいるだろうか? イタリア車としては、一般ユーザーとしても手が届きやすく、しかもイタリアンな雰囲気のデザインに魅了された人もいるだろう。または、イプシロンというモデル名を初めて聞いたという人もいるかもしれない。

 そんなイプシロンが、本国イタリアでは直近で年間4万5000台も売れているという。現行モデルは2011年にデビューした3代目というロングセラーである。

 その背景に何があるのだろうか? まずは、ランチアというブランドについて見ていきたい。

 ランチアは1906年設立の老舗メーカー。中高年の方では、ランチア「ストラトス」を思い出すかもしれない。1970年代初頭に登場した、いわゆるスーパーカー的存在ながら世界ラリー選手権のトップランナーとなった実力派であった。

 1980年代には、ランチア「ベータ・モンテカルロ」をベースとした「ラリー」へと進化する。そんなアグレッシブさを強調したランチアだが、1990年代以降はフィアットグループのなかでもオシャレで上級志向のブランドという路線になっていく。

 大きな転機となったのは、2008年にアメリカを起点として世界を巻き込んだ金融危機だ。いわゆるリーマンショックだ。その影響で、アメリカのクライスラーが経営破綻した。その後、紆余曲折がありFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)として経営統合された。

 正直なところ、FCA時代のランチアは、ブランドとしての独自性を失っていた印象があった。そのなかで、イプシロンは1994年登場の初代以来、ランチアらしさを維持した小型車として欧州で認知された。

 一方、日本ではFCAになってから、国内販売網とその関係などによりクライスラー「イプシロン」を名乗り、ランチアとして存在感が薄れてしまったという経緯がある。モデルライフとして約2年と短命だった。

 そして2021年、ランチアにとってさらに大きな転機が訪れる。

 FCAとPSA(プジョー・シトロエン)が合併した巨大ブランド集団・ステランティスが誕生した。ランチアを含む14もの自動車ブランドが母屋をひとつにしたのだ。

 その上で、ステランティスは各ブランドの商品性や生産・販売国の大幅な見直しを決行する。2030年をにらんだ事業ロードマップでは、2028年には全モデルをEV化する。イプシロンは2024年に次世代ランチアの第一弾となる。

 そのため、2023年はイタリア国内専売として意欲的な実売販売価格設定やレンタカー向け販売などを実施した模様だ。

 イタリア人の多くが、ランチアブランドに対する愛着があり、今後のランチアブランドの維持存続を願ってイプシロンの需要が伸びたものと考えられる。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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