ガンさんをして「長生きしてこのクルマに乗れてよかった」! AMG SL43がみせた異次元の走り【ガンさんこと黒沢元治のDPQ:メルセデスAMG SL43編】

※本記事は雑誌「CARトップ2023年9月号」の記事を再構成して掲載しています

生きてこのクルマに乗れて幸せだと感じるような走り

 今回評価するクルマはメルセデスAMGのSLクラスだ。全体的に高額なモデルであるが、そのなかではエントリーモデルに位置するSL43に試乗する。

 対面したSLは、シンプルな外観だが塊感があって美しい。おとなしめな雰囲気からじつに優雅な印象を受ける。また、FRモデルらしいノーズの長さが特徴的だ。

 電動開閉のルーフをオープンにし、早速走り出す。いきなり驚かされたのは圧倒的なボディ剛性だ。いまどきはオープンボディだからといって、ダイナミクスに影響するほど剛性が不足しているクルマは少ないが、SLはボクが振動剛性と呼ぶ、十分なダイナミクス性能を実現するその上の段階の剛性を余裕で確保しており、じつに質感の高い走りを見せてくれた。

 さらに衝撃であったのがパワーユニットである。ワインディング本線でアクセルペダルを踏み込むと素晴らしい加速を示し、その加速とロングノーズデザインから、3リッター直6ターボあたりが搭載されていると想像したのだが、聞けば2リッター直4ターボだという。また、タービンは瞬間的に過給を立ち上げるため、モーターが採用されているとのことだが、その効果であろう、ターボラグは皆無であった。

 そしてこれだけのユニットでありながらも、じつに扱いやすいのは、回転によるトルク変動が少ないためだ。心から賞賛できるエンジンであった。

 組み合わされる9速ATも素晴らしい。日本のタイトなワインディングであれば、もう少しファイナルが低いほうがマッチするであろうが、前述したエンジンのパフォーマンスもあり、さしたる問題ではない。現在のギヤ比は、ニュルブルクリンクを走行するにピッタリであろうことも想像できる。

 サスペンションも文句の付けようがない完成度だ。加速時のスクウォート、減速時のノーズダイブは、反力が発生するサスのレイアウトによって抑え込まれ、あらゆるシーンで路面に対してフロアがフラットな姿勢を保つため、とにかく安定した走行ができる。

 ボクはさまざまなAMGモデルを経験しているが、総じて乗り味の固さを感じることも事実だ。比較的ハイスピードでの走りを楽しむ分には申し分ないのだが、その分コンフォート性の面がやや厳しい。ところがこのSL43は、ドライブモードをコンフォートにするとじつに快適で、普段の街乗りでも何ら不満を感じることはないレベルであった。

 ブレーキについても述べておこう。ホイールからのぞくローター自体も非常に大径で、かなり気温が高いこの時期に長いワインディングを走行したが、若干ジャダーが見られたものの利きに影響はなかった。また、コントロール性もよく、踏力に対する減速度もリニアであったが、これには先ほど述べた優れたサスペンション設計も影響している。減速時に4輪全体で沈み込むような姿勢となり、4つのタイヤすべてのグリップを十分に使って減速していることを感じ取ることができた。

 新型SLは、このページの主旨であるドライビングプレジャーの最たるものと言えるほど、ドライバビリティに優れた、素晴らしいクルマであった。実際、とてもひと言で表現するのが難しいほどの完成度だ。長生きして、このクルマに乗れてよかった、そう心から思えるほどの出会いであった。

※本記事は雑誌「CARトップ2023年9月号」の記事を再構成して掲載しています


この記事の画像ギャラリー

新着情報