この記事をまとめると
■クルマだけでなくトラックの電動化も避けられない
■さまざまなハードルによって日本ではEVの普及が進んでいない
■いま注目を集めているのがファブレス企業の存在だ
工場をもたないファブレス企業が活躍するバス業界
自動車のEV化が叫ばれるようになって久しいが、我が国の普及率は必ずしも高くない(2025年2月のEV・PHEV新車販売比率は2.66%、前年同月は2.81%)。その理由として、
・車両本体価格が高額
・満充電時の航続距離が短い
・充電インフラ不足
・充電時間がかかる
・充電規格が未統一
などが挙げられている。トラックの場合はこれらに加えて、車両重量が重くなることで積載量が減るなどといった問題がある。
とはいうものの、将来を見据えればEV化は避けてとおれない道である。小型トラックでは、エルフEV、デュトロZEV、eキャンターといったEV車両が、トラックメーカー各社から市場に投入された。大手運送事業者は、カーボンニュートラルへの取り組みとして、これらの積極的な導入を図っている。
バスの場合、国内メーカーが出遅れているために海外から輸入したり、ベンチャー企業がファブレス方式で製造、販売したりする例が多数見られる。なかでも路線バスやコミュニティバスは、各地で利用需要が高まっていることに加えて、専用の充電拠点が設けやすいことや走行距離が短いことなどから、現状のEV車両でも対応が可能ということで、導入が進み始めている。
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ラストワンマイルを担う小型トラックも、その運用環境が路線バス、コミュニティバスと似ていることもあり、中堅、中小運輸事業者もEVの導入に前向きだといわれている。そこでバスの場合と同じように、さまざまなベンチャー企業がコストを抑えた小型EVトラックを提案し、それらの企業にアピールをしているのだ。
とはいえ、海外で生産されたトラックは、使い勝手、クオリティ、アフターサービスなどに、不安をもつ運輸事業者も少なくない。そこで注目されているのが、バスと同じようなファブレス企業なのである。ファブレスとは「工場をもたない」という意味。すなわち、日野自動車やいすゞ自動車のように、車両を組み立てる自社工場をもっていないということだ。そういった事業者は、どのようにしてEVトラックを生産するのだろうか。
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それは、ファストファッションメーカーが製品の企画、デザインを自社で行い、その仕様書で海外の工場に発注をするのと同じやり方だ。これをEVトラックに置き換えれば、自社で企画、設計を行って調達部品などの仕様も細かく決めて調達し、それを海外の工場で組み立てるということである。この方法であれば、製品は外国製だが中身やクオリティは日本製と遜色のないものができあがるのだ。
2025年1月に東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド2025」では、ZO MOTORSが余計な装飾を廃して機能性、安全性を追求した、ラストワンマイル向け小型トラック「ZM6」を出展していた。この車両が採用した駆動用モーターは、エネルギー消費効率が97%を誇る高性能なもの。最大出力は115kWで最大トルクは300Nmに達する。
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安全装置として、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報装置、前方衝突警報装置、車両安定性制御装置、車両接近通報装置、バックカメラシステムなどを装備。最新の国産小型トラックと、同様の安全レベルを保っている。1回の充電で走れる距離は180kmだ。
人間工学に基づく運転席シートや視認性の高い7インチデジタルメーターディスプレイなど、ドライバーの操作性・快適性にもこだわりを見せる。このように、さまざまなEVトラックが市場にエントリーすることは、それを使用する運送事業者やトラックドライバーの選択肢が広がることになる。EVトラックの普及率向上のためにも、好ましいことだといえるのではないだろうか。