輸送力は1.5倍でも車両が高すぎて導入コストじゃ割りに合わない! それでもいま連節バスが増えているワケ

この記事をまとめると

■近年は街なかで連節バスを見かけることが増えた

■フルトレーラーよりも大きくて運転も難しい

■連節バスのメリットや増えた理由について解説

横浜市が導入した連節バスは1台8800万円!

 近年、都市部各地で見かけることが増えた連節バス。傍から見れば、高速道路などを走っているフルトレーラーのバスバージョンといった受け止めで、どちらも長くて迫力のある大きな車両といった捉え方をされているのではないだろうか。しかし、そういった認識に反して両者には大きな違いがあるのだ。

 まず、運転に必要な免許証。フルトレーラーは牽引免許が必要だが、連節バスは1台のバスが幌でつながっているという解釈なので、大型免許があればよい。とはいえ、連節バスはその操作や動作がトレーラーに近い部分が多く、牽引車並みの運転技術が必要とされている。そのために、実際の運用では牽引免許保持者に運転させている事業者が多いといわれる。

 取得の難しい牽引免許が必要な上に独立した車両を牽引するフルトレーラーが車両のなかでは1番大きいと思われがちだが、じつは連節バスのほうが大きいというから驚きだ。我が国における連節バスの歴史は意外と古く、第1号は1950年に導入されている。このときは、既存の大型バスを改造したものであったため、全幅、全高は変わらずに全長が11mであったという。

 公道を走る車両には道路運送車両法や道路法などで大きさなどに制限があり、全長は12mで軸重は10トンとされている。フルトレーラーは基本的にその枠内に収まっているのだ。この規格を超えた本格的な連節バスの導入は、1985年のつくば科学万博で使用されたシャトルバスである。このときには、同博覧会会期中の特例として運行が認められた。

 2000年ごろから海外の連節バスを導入する事業者が現れ、つくば科学万博の事例に沿ってそれぞれ特例措置が取られていたが、2014年に国土交通省が同車両導入のルール化に着手した。その狙いは、バス事業の輸送力最適化を図ることにあったという。

 わが国では総じてバスの需要は減少しているものの、都市部の路線では増加に転じているところがある。バス事業者がそういった需要の変化に応じながら事業を継続するには、人件費を抑えて輸送力を増強する必要があったのだ。そこで、道路運送車両法で制限されている全長、軸重を超えた連節バスを導入し、ひとりの運転手で輸送力を1.5倍にしようと考えたのである。

 前述のように、連節バスを導入する最大のメリットは輸送効率を高められることだ。ただ、導入コストは決して低くはない。横浜市が導入した114人乗りのハイブリッド連節バスは1台で8800万円。神奈川中央交通が2005年にドイツから輸入した129名乗りの車両は約5600万円であったという。通常の路線バスなら、新車価格で2500万円ほどだ。さらに、連節バスに合わせてバス停やターミナルの作り替えも必要になる。これらを合わせたイニシャルコストを回収するのは容易なことではないだろう。

 ただ連節バスの導入には、もうひとつ大きなメリットがある。それは、広告塔としての役割だ。現在導入しているのは福島県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、三重県、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県、福岡県などである。いずれも、運行地域で話題になって注目を集めている。今後、観光バス、貸切バスなどにも導入が進み、やがてはトレインバスの誕生といった流れになることが期待されている。


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