この記事をまとめると
■ルノーがリアルタイム都市データ収集・分析プラットフォーム「cleveR insights」を発表
■街を走る車両のセンサーやカメラが道路の損傷や交通状況を瞬時に検知する
■将来的にはクルマが街の治安を守る存在になるかもしれない
単なる移動手段から「動く高性能センサー」へ
現代の自動車は、100年前の「エンジンがついた馬車」から大きく進化を果たし、いまや「タイヤのついた超高性能コンピュータ」へと変貌を遂げている。自動運転技術や安全運転支援システムの進化により、最新のクルマには高精度なカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー、さらにはGPSや通信モジュール(車載通信機)などが惜しみなく搭載されているからだ。
そんななか、ルノーがモビリティの未来を占う興味深い発表をした。それが、リアルタイムで都市のデータを収集・分析するモバイルプラットフォーム「cleveR insights(クレバー・インサイト)」だ。
ルノーの「cleveR insight」ユニット画像はこちら
この技術は、簡単に言えば「街なかを走っているルノー車を、そのまま都市のセンサーネットワークにしてしまおう」という試みである。特別な測定車を走らせる必要はなく、専用センサーを搭載した大型のアーチ状ユニットをルーフに装着した車両が街を走ることで、車載カメラやセンサーが道路の穴や車線の摩耗、交通量、大気質などのデータを収集し、データセンターへ集約されてAIなどによって分析される仕組みとなっている。
ルノー「cleveR insights」を搭載したトゥインゴe-TECH画像はこちら
都市のインフラ管理を劇的に効率化する画期的な技術だが、一方で、将来的に街を走るクルマが24時間体制で街を監視する「カメラ」になり、プライバシーが侵害されるのではないかという懸念も生じてくる。
もちろん、こうした懸念(プライバシー問題)は当然クリアされなければならないし、ルノー自身もデータの匿名化やプライバシー保護は厳格に行われると強調している。
しかし、この「クルマの監視カメラ化」が防犯などに活用された場合のメリットは計り知れない。
ルノー・トゥインゴe-TECHのディスプレイに投影されたカメラ画像画像はこちら
たとえば、このクレバー・インサイトを搭載したトゥインゴが幼稚園や小学校の通学路を走っているだけで、周囲の子どもたちの見守りカメラとして機能するという使い方も考えられる。不審者が子どもに声をかけようものなら、カメラが即座にその様子を捉え、すぐさま近隣の交番や保護者のスマートフォンへアラートを飛ばすことになるかもしれない。また、コインパーキングに駐車中のトゥインゴが、向かいに駐車されているGT-Rの周囲をうろつく怪しい人物の不審な動きを察知すれば、ヘッドライトをパッシングして不審人物を威嚇すると同時に警察に位置情報を自動通報してくれるかもしれない。電柱の陰での立ち小便なんてもってのほかだ。
「クレバー・インサイト」は、街なかのクルマがセンサーとなって地域の治安維持に貢献する「動く交番」のような存在となる可能性を秘めているのだ。一見すると地味なインフラ系テクノロジーに見えるが、これはクルマという存在が「道路を消費して走る存在」から、「道路や街をケアして守る存在」へと変貌する最初のステップとなるかもしれない。
ルノー「cleveR insights」を搭載したトゥインゴe-TECH画像はこちら
「最近のクルマは電子制御ばかりで面白くない」と嘆くクルマ好きは少なくない。しかし、その電子制御が道路の異常を見つけ、犯罪を未然に防ぎ、人々の安全を守る存在になるのだとすれば、クルマの価値は「移動する道具」から「街を守るインフラ」へと大きく変わることになる。もっとも、その時代になれば、愛車の前でうっかり立ち話をするだけでも、「クルマに見られている」という意識をもつようになるかもしれない。くれぐれもクルマの前での「油断した行動」は慎むよう、いまから気をつける習慣を身に着けておこう。