この記事をまとめると
■現在のクルマはさまざまな先進安全装備を備えている
■車両価格の半分以上はソフトウェアやセンサーだといわれている
■クルマ関係のソフトを開発する現場は過酷な環境だ
さすがにそれはしんどいって!
公私ともに、クルマ関係に携わる人たちが筆者のまわりにはいるわけだが、先日お会いした人から悲痛な叫びを聞いた。その声の主は、ADASなどをはじめとする、先進安全関係のソフトウェア開発に携わる人だ。
現在販売されているクルマは、ひと昔前と比べて同じ車格でも倍くらいのプライスを掲げるクルマが増え、「軽自動車が300万円手前!?」とか、「ミニバンを買うのに400万円以上必要なの!?」みたいな状況になっている。これらの背景には、原材料の高騰などももちろんあるのだが、車体代の半分はソフトウェアやセンサーが占めているともいわれている。
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いまや加減速はもちろん、一定の距離で前車を追従したり、車線変更まで勝手にやってくれるクルマまで登場しているほど。安全面でも、物陰から出てくる歩行者などを検知したり、ドライバーが体調不良になったら自動で停車、通報してくれるクルマまで登場しているが、それらはすべて最先端のセンサーとソフトウェアのおかげで成り立っている。
「そんなソフトウェアやセンサーのせいで高くなるなら、昔みたいなシンプルなクルマにしろ」という声も少なくないが、誰もが移動できる社会を実現するためなのはもちろん、一部機能は法律でつけることが義務になっているので、我々個人ではどうにもできないので致し方ないところ。
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さて、そんなクルマに関するソフトウェアはとにかく開発の日々。新車が出て「新機能追加!」「世界初装備!」とかいわれても、出た瞬間からそれはもうソフトウェアの世界では過去のもの。次の新車、次の次の新車へ向けて、どんどん機能をアップデートしていかなければならない。イタチごっこだ。
しかし、その開発がときに会社を狂わせることも……。というのも先日、昨年の半ばから毎月100時間に迫るほどの残業をして、急ピッチで開発が進められていたとあるクルマのソフトウェアだが、突如計画が中止になり、今までの時間と努力が無駄になったという。
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ソフトは誤動作やバグを探すデバッグという作業が肝心で、それもクルマともなれば、バグや誤動作ばかりのまま公道に出すわけにはいかないので、テストコースでひたすらさまざまなテストを行う。酷いとそもそも動かないとか誤動作をするなんてものも多く、「どの組み合わせがダメなんだ?」「どのプログラムがダメなんだ?」と、膨大なコマンドなどを紐解く必要があり、ひと筋縄ではいかないという。
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そしてこれらのソフトウェアは、メーカー本体ではなく下請けでやっていることも多い。そして下請けに対しては、「仕様書は絶対」「納期厳守」「なるべく低コスト」みたいな、無茶振りを課してくることも日常茶飯事。それらに振りまわされつつ、1年近く毎日残業で仕事を進めていたそうだが、それが鶴のひと声で「はい中止」といわれたら溜まったものではない。しかもそのプロジェクトに携わるのもコストの都合から少人数であることも多く、とにかく修羅の連続だ。
しかも今回の件はたまにある「やっぱり中止になりそう……」という前触れがなく、突然「中止」となって打ち切られたという。その「中止」という情報も、本社からの通達ではなくSNSなどで見たそうで、「そんなの聞いてないぞ!」「俺たちには先にいえよ!」と大荒れ。それもそのはず。この開発は当日も行われていたのだから……。下請け各社へは、後日事情が説明されたそう。
これには「俺らがいないとモノができないのに、俺らのことはなんも考えてないのか!」と不満爆発。相当荒れたそうだ。会社規模の話をするならば、この空振り案件はあとで補償されるそうだが、時間は返ってこないので、エンジニアたちのやる気は一気に削がれるとのこと。
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彼は「ケツ(納期)が決まってるから死ぬ気でやったけど……まああの中身とあの納期は俺だけじゃなく、ほかの領域も無理だったと思うけどね。散々な1年だったよ」と思い出を語った。
クルマに限らずだが、製品の開発は日々研究とトライアンドエラーの繰り返しで、お上の判断で「はい中止」なんてのもしょっちゅうあるそうだ。こういった裏側の苦労があるからこそ、我々の安全が守られていると思うと頭が下がる。なお、今回の騒動に巻き込まれた気になる車種に関してはシークレットとのことである。いったい何だったのだろうかと気になるところだが、このように日の目を見ない車両が開発現場の裏には山ほどあるということだ。
※本記事の画像はすべてイメージです